作家・古川日出男さんのデビュー15周年記念イベント『声を狩る2013 古川日出男の「朗読空間」』が、2月25日、東京・青山のライブハウス「月見ル 君想フ」で行われた。
このイベントは古川さんがかねてから行ってきた「朗読」に加え、ライブ、演劇、対談と盛りだくさん。出演者にはミュージシャンの小島ケイタニーラブさんや、演劇カンパニーの「ロロ」、文芸雑誌「新潮」編集長の矢野優さん、「HEADZ」主宰の佐々木敦さんなど、古川さんにゆかりのある面々が集結した。
イベントの先陣を切ったのが古川さんと、小島ケイタニーラブさんによるユニット「ヒデオブジェクトケイタニーラブ」。
宮沢賢治『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』を古川さんが朗読し、ケイタニーラブさんはギターを、その言葉の隙間を縫うように、時には言葉に重ねて響かせた。
古川さんの朗読は「朗読」という表現では、おそらくその本質が伝わらない。それは、「身体」を剥き出しにした、演劇とも舞踏とも、歌とも呼びうるものだ。
演劇カンパニー「ロロ」は、古川作品を劇的手法でコラージュ。視点と時間軸の切り替えを駆使して幻覚的な世界を作り上げた。
圧巻だったのはラストに再び登場した「ヒデオブジェクトケイタニーラブ」。
芥川龍之介『藪の中』がクライマックスに向けて、ジリジリと緊張感を増しながら展開されていく。古川さんの語りとケイタニーラブさんの音響が呼応しながら高まり、観る者はステージ上の二人に惹きつけられる。会場の緊張が最高潮に達し、観客が完全に物語世界に浸りきった時、フッと舞台の空気がゆるみ、イベントは終わった。
イベント中盤の佐々木敦さんとの対談では、これまでの活動を振り返りつつ、5月に刊行される新刊『南無ロックンロール二十一部経』(河出書房新社/刊)について語った古川さん。15周年という節目を超えて、今後のさらなる活躍を予感せずにいられない夜だった。
(新刊JP編集部)
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