学校のクラスに1人はいる名字といえば、佐藤さん、鈴木さん、そして田中さん。よくいる名字の筆頭で挙げられ、「田中」という字面も単純。しかし、田中さんにもルーツがあるのだ。
本書『田中さんのルーツ』(森岡浩/著、ジェイ・アプリケーション/刊、アマゾンで発売中)では、タイトル通り「田中さん」のルーツに始まり、都道府県別の「田中さん」の解説、ご当地出身の著名な「田中さん」など、文字通り「田中さん」の全てが解説されている。
「田中さん」の基本的なデータとしては、佐藤、鈴木、高橋に次いで4番目に多い名字であり、推定人口は135万人。
名字は、地名に由来するもの、地形や土地の様子に由来するもの、方位に由来するもの、職業に由来するものなど、いくつかの種類に分けられる。「田中」は、「山本」とともに日本を代表する地形姓だ。文字通り「水田の中」を意味しており、米を食の基本に捉えている日本において、最も“日本的”な名字といえるかもしれない。また、「田中」という名前は地名にも多く、そちらに由来する「田中さん」も多い。
また、「田中」姓は歴史も古い。
「田中」という名字は古代から見られるが、田中一族で最も著名なものは近江国の田中氏だ。近江の田中氏は高島郡田中郷(滋賀県高島市安雲川町田中)発祥。近江に古くからいた豪族佐々木神主氏の一族である、愛智家行の子憲家が田中氏を称したのが祖である。
では、「田中さん」の日本全国の分布はどのようになっているのだろう。沖縄を除く西日本ではすべて15位以内と、西日本に非常に多い。一方、東日本でも少ないわけではなく、すべて50位以内に入っている。昔から日本の象徴ともいえる米を作る水田は全国各地にあるため、名字となることが多く、全国にまんべんなく分布していることがわかる。県別ランキングと人口比でも1位なのは鳥取県。鳥取県の田中性は人口の2.3%を占める。県内では鳥取市付近に非常に多く、鳥取市、岩美群岩美町、八頭郡八頭町では、いずれも3.5~4%を占めて最多性。旧河原町と旧佐治村(ともに鳥取市)では6%を超えていた。
自分の名字のルーツやデータを知るというのは、面白い作業だ。特色の薄い「田中」という名字も、その歴史や分布を調べると興味深い事実が隠されているものである。
本書の「名字の歴史」探索シリーズは、伊藤、佐藤、加藤、高橋、山本、渡辺などが出版されている。面白みがないと感じている自分の名字も、そのルーツを知ることで新たな発見があるかもしれない。
(新刊JP編集部)
知ってますか?自分の名前の由来