努力してもうまくいかないこともある。そんな時、思考回路を変えてみたら新たな突破口が開けるかもしれない。
『「考える力」を身につける本』(出口汪/著、フォレスト出版/刊)では、ビジネスパーソンが生涯にわたって必要なスキルを身につけるための本物の学習法を、著者の出口氏が紹介してくれる。
日常の中でほんの少し、論理の扱い方を意識すれば頭が良くなると出口氏は語る。そこで知っておきたいのが「レトリック」というものだ。レトリックとは、狭義では「文章の技巧」のこと。私たちはいつも、同じものに対し、同じ表現をする。しかし、同じ表現をするということは、いつも同じ角度からものを見ていることに他ならない。すると、いつも同じ部分が死角となって、目に入ってこないのだ。
コインは丸い。しかし、コインは真横から見れば四角形だ。
あるとき、いつも見ているものや情景を、言葉を変えて表現してみる。これがレトリックだ。
すると、同じものでも、見る角度を変えることで、いままで目に入らなかったものが見えてくる。まさにレトリックは創造・発見の方法なのだ。普段、男は男の、大人は大人の視点でものを見ている。男は女の、大人は子供の視点でものを見てみれば、いままで見えなかったものが見えてくるかもしれない。
「万有引力の法則」のニュートンもレトリックを駆使していたという。
リンゴが木から落ちることは、体験的に誰でも知っているだろう。しかし、ニュートンは同じ現象に対し、表現を変えてみた。リンゴと地面は引っ張り合う。これがレトリックだ。
この瞬間、ニュートンには、いままで見えなかったものが見えたのだ。ニュートンはすべてのものが引っ張り合うのなら、当然、地球と月も引っ張り合うのではないか。地球と太陽も引っ張り合うのではないか。さまざまな現象を説明することができる。
その結果、万有引力の法則という真理を発見した。では、なぜ他の人には、万有引力の法則を発見できなかったのだろうか? それは、私たちは目でものを見ているために、物事の現象面にとらわれるからである。現象面だけ見ると、リンゴが落ちることと潮の満ち引きは、一見、何の関係もない。
しかし、ニュートンは現象面にとらわれることなく、論理でそれを見て取ったのだ。
考え方や論理の扱い方、記憶術、読解力など頭を巧く使うテクニックを知るだけで、今までとは違った視点で物事を見ることができるようになる。これだけでも新たな発見ができるだろう。行き詰っていたり、新たなことをしたいという人にはおすすめだ。
(新刊JP編集部)
物事の見方を変えるちょっとしたコツ