“経営学の父”P・F・ドラッカーは実は“経営学者”ではなかった?
今、日本で馴染みのある経営学者といえば、P・F・ドラッカーの名をあげる人も多いはずです。きっと学問の先端を行くアメリカでも、ドラッカーの論文が読まれ、議論されている…かと思いきや、実はそうではないのだそうです。
経営学者たちはドラッカーを読んでおらず、彼の考えが下敷きなっていることもないそう。そんなことで経営学を議論できるの? と思うかも知れませんが、むしろアメリカのビジネススクール教授の大半は、ドラッカーの本を「学問としての経営学の本」と認識していないという事実があると、ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタント・プロフェッサーである入山章栄氏は言います。
なぜなら、ドラッカーの言葉は“科学”ではないから。経営学とは社会科学という学問領域の一つで、欧米の主要なビジネススクールの教授たちは、経営理論分析に基づいて得られた理論仮説を、実証や調査分析を経て検証していきます。つまり、統計調査や実験によってデータをとって、それを基に仮説を実証したり、新しい発見をしていくのです。
一方、ドラッカーはそうした科学的なやり方をしていません。彼自身が経営学者ではなく「社会生態学者」と自称したり、周囲から「未来学者」と言われたりしたのは、そういったところから来ているからなのかも知れませんね。
ただ、もちろんドラッカーは経営学に対して重要な示唆を与えたことは紛れもない事実であり、入山氏はドラッカーの「名言」を高く評価しています。「科学」ではないけれども、ドラッカーの言葉に耳を傾けることは大事なのです。
■そして、「世界の経営学」の最先端へ
しかしながら、このような海外のビジネススクールにいる教授たちが切り開いている「世界の経営学」の実態は、日本の方にはほとんど知られていません。では、今、世界の経営学のフロンティア領域ではどのような話題が研究されているのでしょうか。 それを分かりやすく説明したのが、入山氏が執筆した『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版/刊)です。
・ポーターの競争戦略論はもう通用しない?!
・「超競争」(ハイパー・コンペティション)時代の戦略
・組織の学習効果
・企業イノベーションを促す方法
・“見せかけの経営効果”にだまさないための処方
・三種類の人や組織のソーシャルな関係がビジネスに与える影響
・集団主義的な国民性と海外ビジネス
・アントレプレナーの国際化
・不確実な経営環境での事業計画法
こういったものを、本書では実際に研究者が行った研究分析の結果や、実例(ウォルマートに戦いを挑み敗れたKマート)などを用いながら解説していくわけですが、とても分かりやすく、平易な言葉で、経営学をかじったことのない人でも理解できる文章で書かれているため、誰でも読み解けるはずです。
基本的に社会科学は時が経っていく中で変化していくもの。かつては通用した理論でも、現在はそれが通じなくなっているということは多々あります。ポーターの競争戦略は非常にオーソドックスな理論ですが、今の時代にすべて適合できるかというと、それだけは十分でなくなってきています。
本書では他にも経営学の考え方や、課題など、経営学を学んだことがない人でも分かる言葉で、経営学概論をつづっていきます。この中では目からウロコだと思うものや、あなたの心を躍らせるようなスリリングな理論も含まれているはず。そして何よりも、日本のビジネスパーソンに興味があるような話題を厳選して紹介しており、「世界の経営学」の知見から得られる、実際のビジネスへの示唆も多く語られています。
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(新刊JP編集部)
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