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コンビニで大人用紙おむつが売られる日も近い

 2007年に、65歳以上の人口が全人口の21%を超える“超高齢社会”を迎えた日本。その後もその割合は伸びており、総務省統計局によれば、2025年には全人口の28%が高齢者となる試算も出ている。これは、人口数にして3500万人になるというのだから驚きだ。

 そうなれば活性化するのが、シニア向けのビジネスだ。経済を扱うテレビ番組ではよくシニアビジネスについて特集が組まれていたりもするが、その実態はどのようなものなのだろうか。
 これまで多くの民間企業とともにシニア向けビジネスを立ち上げ、著書もいくつも執筆してきた東北大学特任教授で村田アソシエイツ代表の村田裕之氏は新刊『シニアシフトの衝撃』(ダイヤモンド社/刊)で、2012年は「シニアシフト元年」とも呼ぶべき区切りの年だと述べている。そこで起きていることは、単なる団塊世代退職市場ブームなどという次元ではなく、長期的継続的に起こる社会構造の変化への対応なのだという。
 では、実際、どのようなことが市場の中で変わっているというのだろうか? 本書からご紹介していこう。

■大人用の紙おむつ市場が赤ちゃん用市場を逆転
 「紙おむつ」といえば赤ちゃんがつけるものと想像する人も多いのではないだろうか。赤ちゃん用の紙おむつ市場は2011年でほぼ1400億円にのぼったが、2012年の今年、大人向け紙おつむ市場が1500億円に達する見通しとなっており、なんと赤ちゃん用市場を逆転するというのだ。
 これは1960年に生産が始まって以降初めてのこと。1995年頃から少子化の影響で減少基調となっていたが、その裏で大人用紙おむつが年率5%程度の成長を続けていたという。

■リカちゃん人形には「おばあちゃん」が登場
 1967年の発売以降、ロングセラーを記録しているリカちゃん人形。その家族構成は永い間、リカちゃんを中心に、パパ、ママ、姉、妹、弟、いとこ、そしてペットであった。いとこという存在を除けば、一般的な核家族だろう。
 しかし、2012年4月、この一家に「おばあちゃん」が加わった。名前は香山洋子。年齢は56歳で、リカちゃんの母方の祖母という設定だ。この背景には、夫婦共働きによる母方の祖母の子育て参加の増加があげられ、村田さんは、開発元のタカラトミーには「孫と遊ぶときに自分(つまり、おばあちゃん)役の人形があるといい」などとの声が寄せられていたとつづっている。

■ゲームセンターに集まるシニアたち
 ゲームセンターといえば若者たちがたむろするところ、というイメージも覆ろうとしていると村田さんは指摘する。2012年4月、ゲーム業界大手のカプコンが20店でシニア向けの「ゲームセンターツアー」を初めて開催。のべ330人の参加者があったという。さらに、50歳以上の会員向けのサービスも展開。
 ただ、熱中するゲームには差があるようで、シニア層に受けるゲームは主にスロットマシンのような「コイン」投入型ゲーム。ゲームセンターでの遊びを通して孫とコミュニケーションを交わす人もいる。ゲームセンター側も、子どもたちが学校にいる平日の昼間に、シニア層を取り込もうとする動きもあるという。

■シニア向けの出会いサポートも登場
 中高年向けの「出会い・結婚サポートサービス」も需要を増しており、シニアシフトが進んでいるようだ。新聞紙面で広告を大大的に展開し、対象年齢も以前は「30歳から50歳後半程度」だったのが、現在は「35歳から80歳」に広がっていると村田氏はつづる。
 寿命が延びたこと、離婚の敷居が低くなっていることなどがあげられるが、確かに高齢者同士の再婚は珍しくなくなってきている。

 本書の冒頭ではこの他にも「おばあちゃんアナウンサー」の起用や、シニア向けスマートフォン戦略、大手スーパーの事例をあげており、そこだけを読んでも、いかに「シニアシフト」が進んでいるかが実感できるだろう。
 しかし、それだけではまだこれから起ころうとしている「シニアシフト」の入り口だけしか見たことにはならない。

 本書ではこれまでのシニア向けビジネス戦略を振り返りながら、その現状と、これから企業はどのように対応していいのか、まで書かれている。
 シニア向けビジネスの過去、今、そして未来。これからやってくる時代に私たちはどう対応していけばいいのか、それを考えるための示唆を与えてくれる一冊だ。
(新刊JP編集部)

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