「美幸」　鈴木おさむ著

 　放送作家・鈴木おさむが“復讐（ふくしゅう）代行”という新たな愛の形を描く、衝撃の恋愛小説。
　新聞社主催の書道コンテストで優勝し、有名になったことでいじめの標的にされた美幸は、日記に記したクラス全員の名前を「糞人」「雌豚」など汚い漢字で塗り潰し、リコーダーにいたずらを仕掛けるといったひそかな復讐で耐え忍んでいた。そして、人生のリセットをかけた高校時代も無残な形で裏切られ、彼女の人格形成に大きな影を落とす。
　就職先で自分と同じ境遇を感じた元役者・雄星に出会い、転機が訪れる。ひそかに彼を愛し彼を傷つける人たちへ勝手に復讐を行うという“生きがい”を見つけたのだ。次第にその愛（復讐）はエスカレートしていき・・・。
　絶え間なく訪れる残酷な描写に心が折れそうになり、美幸がはまっていく復讐劇に一喜一憂、明かされた衝撃の事実に目をむく―。秀逸な言葉遊びに脱帽した。まさに新境地。