「ブータンで本当の幸せについて考えてみました」　本林靖久・高橋孝郎著

 　国民総幸福で知られるブータン。その実態は、急速な近代化により、身の丈に合わない消費行動や失業問題を引き起こしている。これらの動きは、高度経済成長、バブル崩壊を経験した日本を思い出させる。
　本書は、ブータン首相の下で国民総幸福と経済を学んだマッキンゼー出身の経済専門家と、宗教人類学者で僧侶が、それぞれ経済と仏教の視点から、ブータンと人々の幸せのゆくえについてまとめている。経済成長のみに頼らない幸せを探る日本へのヒントにもなっているのだ。
　日本人にとっては、すでに通り過ぎた道をたどる必要があるのかと思われるかもしれない。しかし、ブータンの変わりつつある社会を本書から見つめることで、日本が失ってしまった「何か」を感じ、これから「何を」大切に生きていくべきかを考えるきっかけになるはずだ。