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「横道世之介」 吉田修一著

 柴田錬三郎賞を受賞した吉田修一氏の同名小説を、「キツツキと雨」の沖田修一監督が映画化。まるで屈託がない主人公と仲間たちの青春群像に心が癒される。
 1987年。大学進学のため長崎から上京した横道世之介(高良健吾)は、入学式で声をかけてきた倉持(池松壮亮)に引きずられ、サンバサークルに入部する。だが、高級ホテルでポーターのバイトも始めたので、毎日忙しい。
 東京に慣れたころ、友達と自動車教習所に通う世之介は、お嬢様育ちの祥子(吉高由里子)と親しくなる。夏休み、彼が長崎の港町にある実家に帰ると、先に到着した祥子が待っていた…。
 原作の世之介は、頼まれごとを断れない気の弱さと、イヤミのない図々しさで仲間に愛されている。デートに運転手付きの高級車で現れる、祥子の浮世離れしたキャラが出色。バブルの真っ盛りに学生生活を送った人たちの陽気な気分が羨ましく、懐かしい。
 (映画評論家・垣井道弘)

書名:横道与之介
著者:吉田修一
発行:文春文庫
定価:750円

夕刊フジ

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