俳優・劇作家というキャリアを持つ戌井昭人は、すでに芥川賞候補になること数回という小説家であるが、その作品はどこか演劇的である。
本作は、77歳の竹芝という資産家が、昔知り合った女性を探しにモロッコへ行くというストーリーだ。旅の道連れに細谷という若い男を雇う。戌井の作品では、しばしば旅が舞台になる。しかも異様な設定が多い。しかし、読むうちにほろりとしたり、人生の深淵について考えさせられたりもする。
評者の長島有里枝氏(写真家)は「怪しげなタンジェの街で、いるかいないかもわからない女を探す二人の男の距離感がとても良い。ラストでは生きるということ、人を愛するということの静かな美しさがしみじみと身に染みた」と記している。
モロッコはしばしば映画や小説の舞台となり、日本では「怪しげな」とか「異教徒風な」というイメージが定着している。著者はそのイメージを逆手にとり、なにかしみじみとした「生の実感」を描いている。
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