ペットとして私たちにとって身近な存在である犬。
飼い主に恵まれて幸せな一生を送る犬がほとんどだが、中には飼い主やペットショップ、ブリーダーに捨てられて路頭に迷う犬もいる。こうした犬のその後はどうなるのだろうか。
電子書籍『とらおさんと犬のお話』(Kumpoo著、幻冬舎刊)は捨てられ、保護された犬たちのその後に迫る写真絵本。そこからは「コロナ禍で増えた」という捨て犬と保護犬を巡るリアルな現状が垣間見える。
保護された犬たちの中にも、すぐに飼い主が見つかる犬もいれば、そうでない犬もいる。彼ら彼女らを追い続けた著者のKumpooさんが見たものとは?
――『とらおさんと犬のお話』(Kumpoo著、幻冬舎刊)はKumpooさんの写真絵本デビュー作だそうですね。最初の作品で「保護犬」という題材を選んだのはなぜですか?
Kumpoo:最初の作品で保護犬をテーマにしたいと決めていたわけではないのですが、もともとずっと犬を飼っている身として、今の保護犬を巡る報道に疑問を持っていたというのはあります。
――どんな疑問ですか?
Kumpoo:捨てられた犬が保健所に引き取られて殺処分される、それを何とか救いましょう、とか悲惨なパターンが多く伝えられているじゃないですか。
――捨て犬を巡る状況としてはそういった情報が多いですよね。
Kumpoo:そうなると、「捨てられた犬」というトピックが、そもそも慈悲心が強い人にしか刺さらないと思うんです。言い換えるなら、一般の人にとって「捨てられて保護された犬を飼う」という行為がすごくハードルが高く感じられてしまう。
捨てられて殺処分というケースは、今は愛護団体や自治体の努力でかなり減っています。大変な努力だと思います。具体的には自治体に引き取られた犬たちを、愛護団体が引き取って新しい家族を探す、というのが一般的になっています。そういった広く伝えられているのとは違う現状をこの本を通じて伝えられたらいいなと思っています。
――飼い主やペットショップなどから捨てられる犬がコロナ禍以降増えていると書かれていました。飼い主が犬を放棄する理由についてはどんなものが挙げられるのでしょうか。
Kumpoo:まずはペットショップで売られている子犬がかわいいといって飼ってみたら、思ったより大変で捨ててしまうというパターン。あとは今すごく問題になっているのが、飼い主が高齢化して犬より先に亡くなってしまうというパターンです。
また、引っ越しでやむなく手放さないといけないとか、飼い主が病気で飼えなくなってしまうケースもあります。
――高齢化社会ということで、飼い主が先に亡くなってしまうパターンは増えていくでしょうね。
Kumpoo:また、その時々で「ブーム」の犬がいるんですよ。今だとトイプードルなどです。そういう犬は売れるのでブリーダーがたくさん繁殖させるのですが、そうなると必然的に病気になりやすかったり関節などに障害を持った犬も増えるわけです。そういう犬を飼うことになった飼い主が負担になって手放してしまうケースもありますし、ペットショップ側はそういう犬を売ってはいけないので、病気がわかった時点で愛護団体に引き取ってもらいに来ることもあります。
――本書には「マム」という元繁殖犬が登場しますね。彼女は繁殖犬としての役割が果たせなくなったから捨てられてしまったわけですか?
Kumpoo:そうです。犬は年に2回出産できるのですが、ひどいところだと小さな檻の中にずっと座らされて、文字通り繁殖だけをする。小さなところに閉じ込められているからお尻がとこずれのようになってしまって手術をしなければいけない犬もいるんですね。
マムもまさにそういう環境にいた犬だったのですが、保護されてよかったです。実は「マムに新しい家族が見つかる」という話は、あくまで「ストーリー」として描いただけだったのですが、本ができた後に本当に新しい家族が見つかったんです。
――あくまで「フィクション」として書いたことが現実になったんですね。
Kumpoo:そうです。今はもうお姫様みたいに扱われていますよ。
――ペットショップが放棄してしまう場合はそういうケースのほかにもありますか?
Kumpoo:あとは売れ残った時です。ブリーダーに戻されたり、愛護団体に引き取られたりします。いいところに行くといいのですが。
(後編に続く)
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