嫉妬や妬み、怒りなど、人間の悩みも苦しみも、そのほとんどは人間関係からくる。
自分の裡に生じたこれらの感情がどうしても手放せずに悩む人は少なくないはず。マイナス感情を持ってしまうこと自体に罪悪感を持ってしまうこともある。
そんな時に、仏教の教えは一つの手がかりになる。誰かに裏切られたとき、嫉妬してしまった時、理不尽な目に遭わされた時、私たちはいかにして怒りや妬みから自由になれるのか?
『日々抱える苦労の救済処置 おすくいぶっきょう』 (世良風那著、幻冬舎刊)は、女子高生たちの学校生活を舞台に、友人間のトラブルによって生じた不安や怒り、悲しみへの対処を通して仏教の教えを伝えていくコミックだ。
主人公の寺山華は付き合っていた彼氏から「受験勉強に専念したいから」という理由でフラれてしまう。これまで楽しく過ごした時間や、献身的に手作りのお弁当を作っていたことなどが忘れられない華は、突然別れを告げてきた彼氏を許せず、周囲に彼の悪口を吹聴するという行動に出た。悪い噂が広まってしまい困った彼氏が、自分の元に戻ってくると考えたのだ。
ところが華の嘘はすぐにバレてしまい、逆に自分の評判が悪くなってしまう。クラスメイトたちからすっかり嫌われてしまい、失意の中やけ食いをする華。そこに正体不明の僧侶が現れる。
僧侶に「あんた今生き地獄に堕ちてるで!」と告げられた華は、自分が「愛別離苦」と「求不得苦」にとらわれていることを知る。
この二つは仏教の八つの苦しみである
・生苦(生まれる苦しみ)
・老苦(老いる苦しみ)
・病苦(病む苦しみ)
・死苦(死ぬという苦しみ)
・怨憎会苦(憎い人に会う苦しみ)
・愛別離苦(愛する人と別れる苦しみ)
・求不得苦(求めても得られない苦しみ)
・五陰盛苦(これらのものを全部まとめて人生そのものという苦しみ)
の中の二つ。人間はこの八つの苦しみに執着して苦しみを手放せないでいると釈迦は説いた。
そして、彼氏が別れの理由としてあげた「受験勉強」を悪く捉えたこと、彼氏への嫌がらせとして嘘の噂話を吹聴したことなどが、苦しみの消滅へと至る道とされる「八正道」にそむいていることを教えられ、「自因自果(自分がまいた種がそのまま自分に返ってくる)を自覚した華だったが、それでも彼氏の心変わりを許すことができない。
そんな華に、僧侶は「すべてのものは無常なのだ」と伝える。縁によって起こることは常に変わり続ける。それならば人の心も変わるのは当たり前であり、彼氏が華を裏切ったと考えるのは間違いなのだ。
◇
本書では、学校でのいじめや、仲間はずれ、恋愛など、心が大きく動く出来事を、仏教の教えの力で乗り越えていく。
会社や家庭、友達付き合い。人が二人以上集まれば人間関係のトラブルはつきもの。他人にイライラしたり、恨みを持ったり、妬んだりして、そのせいで消耗している人は、毎日を気持ちよく過ごすために本書が役にたってくれるはずだ。
(新刊JP編集部)
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