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ネタ作りは「削る」、本の執筆は「膨らます」 かまいたち山内に聞く初のエッセイ本

  • 書名 寝苦しい夜の猫
  • 監修・編集・著者名山内 健司
  • 出版社名扶桑社

2017年キングオブコント優勝、2019年M-1グランプリ準優勝。今やテレビで見ない日はないといえるほどの活躍を見せているお笑いコンビ「かまいたち」。

そのボケ担当である山内健司さんは、2019年のM-1決勝戦前日、関西で5ステージをこなし、家に戻ると翌日の決勝の舞台でやるネタを1人でしつこいほど練習していた。完璧にできるかどうか、何度も試していた。

そんな勝負師としての姿を垣間見られるワンシーンから始まる山内さんの初めてのエッセイ『寝苦しい夜の猫』(扶桑社刊)は、M-1やキングオブコントのことをはじめ、コンビ、恋愛、家族、そして自分の半生をあますことなく書きつづった一冊。文章のテンポが良く、すらすらと読めてしまう。

新刊JP編集部は今回、そんな本書について山内さんにzoomにてリモートインタビューを敢行。本の執筆とネタ作りの違いや、その内容についてお話をうかがった。

(構成・聞き手:金井元貴)

■ネタを書くときは「削いでいく」、本を書くのは「膨らます」

――『寝苦しい夜の猫』についていきます。本書は山内さんにとって初めての本になりますが、連載をまとめたものではなく、書き下ろしになるのですか?

山内:そうですね。本を出すことが決まって、ゼロから書いていきました。

――本を書くことになったきっかけは?

山内:もともと本を出してみたいなという気持ちはあったんです。そんなとき、去年の1月に出版元の扶桑社さんから「猫目線でかまいたちを語るという本はどうでしょう?」と提案を受けまして、攻めた設定で面白そうだなと思って、ちょっと書いてみますということになりました。

――山内さんはご家族と5匹の猫と一緒に暮らしているんですよね。実際に初めて本を書くことになったわけですが、執筆はいかがでしたか?

山内:最初は全編猫目線で書く予定だったので、「にゃーにゃー」ってずっと書いていたんですよ。そうしたら、めちゃくちゃ読みにくくなっちゃって、これは無理だなと。なので、猫をストーリーテラーのような役にすることにしたんです。

――相方の濱家さんも読まれているんですか?

山内:濱家には渡しましたけれど、読んでないっぽいです。濱家の奥さんは読んだらしいんですけどね。濱家は本を読む習慣がないので、多分読めないと思います。かなり気合入れないと手をつけないんじゃないですかね。。

――山内さんは執筆中、筆が止まってしまった瞬間はありました?

山内:そういうことは全然なかったです。書いていくうちにどんどんエピソードを思い出していって、書けることはたくさんありました。ただ、逆にキリがないので、それらの中からインパクトのあるエピソードに絞っていきましたね。

――かまいたちでは山内さんがネタを作られていますが、本を書くということはまた違った感触がありましたか?

山内:それは違いますね。ネタを書くときって、無駄な部分は基本書かないというか、言わなくても分かるやろという部分はセリフにしないんです。つまり、文字数を削いでいく形で漫才を作るのですが、今回はいつもなら削いでしまう部分も書いてほしいと(編集者から)言われて、そうなんやと思って、今までなら削いでいた部分を残したり、なんやったらいらん情報も書いたりしました。

だから、本の書き方は漫才とは真逆といっても過言ではないと思います。ネタは10から削いでいって3ぐらいの絞りに絞った超軽量ボクサーにするけれど、本はどんどん膨らましてヘビー級に持っていくような感覚です。

――そんな本が12月20日に出版されました。書店に並んでいるのを見かけたりはしましたか?(取材は12月下旬に敢行)

山内:全然本屋さんに行けてないので、一回見に行ってみたいですね。でも、Amazonで予約受付が出てくるじゃないですか。あの時点ですでに感動しました。

――「Amazonでついに予約が始まった!」という。

山内:はい。確か予約受付日からランキングがめちゃくちゃ高くて、すごいって思っていましたね。あと、Amazonの猫カテゴリで1位になっているのも面白かったです。カテゴリ内の他の本は猫のコミックエッセイとか、写真集なのに。

■思春期に書いたオリジナルのラブソングをまるごと公開

――本書ではご自身の生い立ちから学生時代、ギャンブルの話、そして昨年のM-1の舞台裏まで、とても丁寧に書かれている印象を受けました。

山内:自分的には誰も興味ないし書かんでええやんという部分でも、編集の方が「それを知りたい人は結構いると思います」と言ってくれて、どんどん書いていった感じです。自分だけで書いていたら、書かなかったであろうことも書きましたし。

――序盤の少年・青年時代の山内さんの紆余曲折ぶりは読みながら笑ってしまいました。特に、当時Jリーグのノートに書いていたラブソングの歌詞をそのまま載せていて。当時の匂いをすごく感じました。

山内:あのノートは綺麗に残っていましたからね。黄ばみもなく。ただ、最近、広瀬香美さんとコラボレーションして、当時僕が書いたラブソングに広瀬さんが曲つけて歌ってくれたんですよ。当時の僕からしたら考えられないことです。

――もし当時のご自身にひと言、今の自分から声をかけるとしたら、どんな声をかけますか?

山内:順調だと伝えたいです。中学校の頃から、自分は面白いからなんとかなるんじゃないかと漠然と思っていたのですが、その通りになっていますよ、と。

――高校時代に一度挫折があったじゃないですか。入学直後の遠足のバスのカラオケで徳永英明さんの「I LOVE YOU」を歌って孤立してしまうという。

山内:ありましたね。あれはやばかったです。お笑いへの道は高校の時に一瞬グラっとしましたけれども。

――でも、この本を読んでいくと、やはり山内さんはずっとお笑いの中で生きてきたというか、お笑いを目指してきたのだと思います。その点はすごくストイックさを感じました。

山内:そうですね。僕は基本的に面倒くさがりで、ラクして生きたいというのが第一にあります。大学の時も一切就職活動しなかったし、面白ければ芸人でお金稼げるんだから、そんなんしなくていいやんって思っていたので、常に退路を断ってきた感はありますね。

ただ、それって多分冷静じゃなかったからそうできたんですよね。冷静になって「もし芸人としてダメだったらどうなるんやろ」と考えたら、怖くなって動けなかったかもしれない。ずっと、大丈夫、芸人になってなんとかなるっていうのが心の中にあるんだと思います。

――NSC時代はずっとCクラスだったそうですが(当時のNSCの実力編成ではCクラスが一番下だった)、そういう時期も芸人をやめようとは思わなかったのですか?

山内:ずっとクラスが下なのはなんでやろうと思っていました。でも、今でもお世話になっている当時の先生に本多さんっていう作家さんがいるのですが、その方は僕のことを面白いと言ってくれていたし、当時R-1グランプリに出場して1回戦通ったんです。当時、NSCで1回戦通ったのは僕と一番上のAクラスにいる2人くらいしかいなくて、面白さはNSCのクラスの基準だけじゃないとは考えていました。それに、その環境が「俺、面白いやろ」という自信をねじ伏せるほどのものではなかったですね。

もっと「お前、おもんないねん」と思わせるような確定的な何があれば、動じていたのかもしれませんけど。

(後編に続く)

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