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「公式」の詰め込みは役に立たない「自分の頭で考える子」の育て方

  • 書名 『デキる社会人になる子育て術 元ソニー開発マネージャが教える社会へ踏み出す力の伸ばし方』
  • 監修・編集・著者名鬼木一直
  • 出版社名幻冬舎

親としては、我が子に社会に出てから自立して、自分の選んだ道でいきいきと活躍してほしいもの。でも、そのための「正解」が用意されていないのが子育ての難しいところです。書店に行けば、子育ての「理論」についての本はたくさんありますが、実際に何をすればいいの?と困ってしまうことが多いですよね。

『デキる社会人になる子育て術 元ソニー開発マネージャが教える社会へ踏み出す力の伸ばし方』(幻冬舎刊)はそんな親の悩みに答える一冊。経済産業省が提唱する「社会人基礎力」の要素である「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力を養う家庭教育を具体的に解説しています。

今回は著者であり東京富士大学経営学部の鬼木一直教授にインタビュー。子育てにおいて親が知っておくべきことや、本書の使い方についてお話を伺いました。その後編をお届けします。

■「公式」の詰め込みはもう役に立たない 「自分の頭で考える子」を育てるには?

――本書には子育てにまつわるさまざまな事例が掲載されています。これらは何を元にしているのですか?

鬼木:ほとんどが私の家族の実例です。13歳の長女と、7歳の男女の双子の3人を育てていて、妻もフルタイムで働いていますから、子どもたちと十分な時間を過ごすことはなかなか難しいのですが、そのような状況においても、子どもたちのやる気を引き出すために何ができるかをいつも考えて子育てをしています。この本ではそうした日常での経験やそこから得た気付きについても記載しています。

――その年頃のお子さんだと、自分から学ぶのはなかなか難しそうですね。

鬼木:そうですね。だから「勉強」というよりも「遊び」の中に学びを取り入れるようにしています。例えば、食事をしている時に、2つしかないケーキを3人で分けるにはどうすればいいかな、ということを問いかけて、子どもたちに考えさせる、などですね。

ものの量をイメージすることができれば、教科書にある「算術」は自然に理解するようになります。数学でも語学でもイメージ力は大切なので、その部分は重視していますね。

――その他、子育てで心がけていることはありますか?

鬼木:「失敗してもいいからトライさせる」ということですね。やってみないとわからないことはたくさんあるので。私自身、建築デザイナーを目指して大学で建築系の学科に入ったのですが、途中で応用物理学科に転籍した経験があります。それまでやってきたことに捉われずに、新しいことにどんどん挑戦できる人になってほしいという思いはあります。ソニーから大学に移ったのも大きなチャレンジだったと思います。

――どうしても人間はそれまでやってきたことの延長線上にあるものをやりたがりますからね。

鬼木:そうなんです。思い切って全然違うことをやれるっていうのは勇気が必要ですけど大切な事だと思います。

――親としては子どもの「学力」ばかりが気になってしまうと思います。ここまでのお話を振り返ってみても、それはあまりよくなさそうですね。

鬼木:学力は高いに越したことはないのですが、「その時点での学力」にこだわり過ぎて、公式やパターンを覚えるような勉強ばかりになってしまうのはよくないと考えています。それだと決まったパターンにはまらない問題は解けないことになりますし、自分で考える力が付きません。

――公式に頼るのではなく、自分の頭で考えるというのは、「社会人基礎力」の中の「考え抜く力」にあたると思います。この力を伸ばすために家庭内でできることはありますか?

鬼木:たくさんあります。先ほどのお話のようにケーキを平等に分ける方法を考えさせたり、ビー玉などを使って数の量や重さを身に付ける、ものの違いを探し当てるなど、地味ですがこういう取り組みが大切になります。

分数の計算を教える時も「分母と分子をひっくり返して...」というテクニカルな方法を教えるのではなく、イメージする力を養うことが重要です。理科や社会も「暗記」で乗り切るのではなく、理科は物事を見る観察眼を身に付けたり、社会は国や地域ごとの文化の違い、気候の違いなどに注目して学んだ方が後々身になります。地球儀を手の届くところに置いて世界を感じるのもとてもいいことだと思います。

――鬼木教授はソニー在籍時に43件もの特許を出願されたと伺いましたが、どんな特許を出願されたのでしょうか。

鬼木:ハードディスク垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドや大型液晶ディスプレイ、レーザーディスプレイデバイス、熱輸送技術、高周波伝送デバイスなどの特許を持っています。あまり知られていませんが、世界で初めて大型の液晶テレビを販売したのはシャープではなくソニーなんですよ。

こうした特許の技術が子育てに直接生かされているかどうかはわかりませんが、特許を生み出すような考え方を育むような子育てを心がけています。100人いて、99人が違うと言っても、自分だけはとことん真実を追求するようなチャレンジ精神や、物事の本質を見極めたりちょっとした違いに気付く力は、これから大切になるのではないかと思っています。

――今回の本の使い方について、子育て中の方々にアドバイスがありましたらお願いしたいです。

鬼木:最初から最後までじっくり読んでいただくのもいいのですが、目次を見て気になる項目をピックアップして読んでいただくという使い方でも大丈夫です。

必ずしも全部実践する必要はないですし、子どもは十人十色ですから「上の子にはうまくいったけど下の子にはうまくいかない」ということも多々あると思います。試してみて、うまくいかなかったらそれは忘れてまた違うやり方を試していただきたいですね。親の発想力も子育てには大切だと思います。

――その他、子育てを頑張っているお父さん、お母さんに伝えたいことはありますか?

鬼木:子どもは皆天才です。他の子と違ったことをしたり、自分と考えが異なっていたとしても、すぐに指摘するのではなく見守ってほしいと思います。子どもを信じ、コーチとしてサポートすることが大切です。そして、「できた時」に結果を褒めるのではなく、「頑張った時」にそのプロセスをたくさん褒めてあげていただきたいと思っています。

また、子育ては義務感や使命感で頑張ると辛くなってしまうので、親も楽しみながら、あまり頑張り過ぎずにできることから地道にやっていくこと、やれなかったことを後悔するのではなく、小さなことでもできたことをプラスに捉えていただきたいですね。

(新刊JP編集部)

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