春前から本格化した新型コロナウイルスの感染拡大は、企業の社員教育にも大きな影響を与えた。例えば新入社員研修が延期になったり、リモートに変更された。また、4月の時点で在宅勤務を命じられていたために、「まだ会社に出社したことがない」という新入社員もいる。
こうした中で、仕事の基本をどのように若手や新入社員に教えるべきか、そして上司や先輩から教わればいいのか、悩んでいる人も少なくないだろう。
30年以上、研修講師として第一線で活躍している潮田、滋彦さんの著書『仕事がデキる「新人・若手社員」になる!潮田式 "1on1" ビジネス基礎研修』(ごま書房新社刊)は、そんな悩める人たちに向けた、仕事の基本と本質を教えてくれる一冊だ。
「1on1」という形式で繰り広げられる課長と若手社員の会話を追いながら、7日間のワークを通して、効果的なメモの取り方、失敗への向き合い方、問題意識の持ち方、コミュニケーション力などを学んでいく。
ここでは本書から、基本中の基本であるメモの取り方、そしてコミュニケーションについて少しのぞいてみよう。
なぜメモを取らないといけないのか。
その大きな理由の一つは、仕事をする人との信頼関係を築くためだ。ここを覚えておかないと、いくらメモを取っても使えないメモになってしまう。
メモを取ることによって、相手の話したことを覚えておくことができるようになる。そして、何度も同じ質問をしたり、「前に言っただろう」と説教されるがなくなる。逆に「自分の言ったことをちゃんと覚えている」ということは強い信頼感を生むのだ。
だからこそ、メモの取り方が重要だ。再現ができないメモは使えない。
本書ではメモを取る3つのコツを伝授してくれる。
(1)思いついたり、重要だと思ったことは、その場で書く
(2)単語ではなく、文章で書く
(3)抽象的で大きな内容ではなく、具体的で身近な内容で書く
いずれも難しそうには見えないが、つい忘れてしまいがちなことばかり。あとで見返してみたときに、一体何のことが書いてあるのか分からないとならないように、意識したいところだ。
そして、それぞれのコツについて、さらに深いレベルの話を本書の中で学ぶことができる。
続いては、5日目のワークとして取り上げられている「コミュニケーション力」だ。
リモートで仕事をしていると、チャットツールでのコミュニケーションがメインになるが、文章から相手の感情が上手く読み取れなかったり、刺々しさを感じたりしてしまうことがある。
ただ、それで相手にネガティブな印象を抱いてはいけない。
これは、顔を突き合わせてのコミュニケーションでも言えることだが、相手と自分は違う背景を持っていて、持っている情報に差があるということを前提に接するべきだろう。
そこで、この2つの基本的な姿勢が大切になる。
(1)他人の考えや思いを否定しないこと
(2)相手の良いところを見ること
人間関係はネガティブな方にスポットライトを当てると、どんどんその場所しか見えなくなっていく。そして、苦手意識が高まっていき、コミュニケーションに齟齬が起きてしまう。
一方で、良い価値を見出す習慣付けをしていけば、人間関係が好転するだけでなく、例えば壁に当たったとき、悩みが出てきたときにも建設的に対応できるようになる。否定をしないこと。良いところを見ること。この2つは気持ちよく仕事をするために必要不可欠なのだ。
また、本書ではさらに会話力の身につけ方についても触れているので、会話が苦手という人は読んでおきたいところだ。
本書は仕事をする上でのマインド面とスキル・ノウハウ面の双方から、「デキる若手社員」と言われるようになるための方法を伝授してくれる。
「デキる社員」とは、もちろん成果を出すし、一緒に仕事にしていて気持ち良いと思わせてくれる社員のこと。そんな彼らがやっていることが本書に詰まっている。
本書で学んだことは、きっと一生レベルで自分の役に立ってくれるに違いない。
新入社員や若手社員はもちろんのこと、教える立場である管理職や中堅社員にとっても自分の身を省みることができる一冊。部下から「こんな上司に会いたかった!」と言われる上司の言動とはどのようなものか、ぜひ参考にしてみてほしい。
(新刊JP編集部)
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