「書かないといられなかった」という理由からエッセイを書き出し、出版社に。
53歳の女性が人生の折り返しから見た自分の半生、家族、友人たち、そして時代の流れ。波留雅子さんの執筆したエッセイ集『ママ、遺書かきました』(幻冬舎刊)は、今を生きる一人の女性の姿がそのままに書き綴られている。
女性にとってアラフィフという年代は、ひと段落のとき。子育てや介護を通して親や娘といった役割を一度降ろし、これからどう生きて行こうかと考える。そんな姿に、共感を抱く人も多いはずだ。 四字熟語をモチーフに、猪突猛進な自分を描いた本書。一人の著者として自分がどう見えたのか。雅子さんにお話をうかがった。
(新刊JP編集部)
――『ママ、遺書書きました』でご自身の半生を振り返ってきたわけですが、一人の女性として生きてこられて53年間、さまざまなことがあったと思います。ご自身のターニングポイントはどこにあったと思いますか?
雅子:今がまさにターニングポイントなのかな。
(このインタビューの日の)一昨日が次女の誕生日だったのですが、ちょうど30歳違うんですね。それで30年前の自分と重ねて思い返すことが多いのですが、私が20代半ばだった頃よりも比べて今は何でもあります。自由だし、結婚してもしなくてもいいし、男らしく、女らしくとも言われないし、子どもを産んでも産まなくてもいい。仕事もやめてもいい。でも、そういう自由な時代だからこそ、これからのことを自分で決めないといけないという悩みがあるのかなと。
私の頃は人生にモデルケースがあるんですよ。女性なら24、25歳で結婚して、子どもを2、3人産んで。その後はわき目も振らず子育てをして、それで親の介護も。そして手が離れたときにさてどうしよう。これが私たちアラフィフ女性たちのリアルなんだと思います。
ただ、人生100年とは言いますが、私は60歳までと考えています。だからあと数年、好きに生きようというパワーに溢れていて、それは今まで子育てと介護に注いでいたパワーをどうにか処理しないといけないという感じです(笑)。今まで娘や母親の役割をしてきたけれど、もう終わり。自分人生をどう生きようかなと。
――40代までは役割をこなすことに必死で、それが終わったのが今ということですね。
雅子:若い方にはまだ分からないかもしれないけれど、この本を読んでもらえれば、その感覚を少しは理解してもらえるかもしれません。
特に女性は、親の前では娘の役割をして、結婚したらお嫁さん、子どもを産んだら母の役割、そしてまた介護で娘の役割をして、という風にずっと息つく暇もないんです。だから役割だけで生きるのはもういいでしょうというのが、私たち世代で話すことの内容です。
私の友人たちはアラフィフになってから、フラダンスのダンサーになったり、ソムリエ資格を取ったりしています。これからどう生きていこうという悩みはあって、男性は定年後にそういう波が来るのかもしれないけど、女性は50歳くらいでそれが来るんですよね。
――ひと段落ついたときに、自分は何をしたいんだろうと悩む。
雅子:はい、そうなんです。でも、9章「生き方 自分との付き合い方 人生の歩き方」の「本末転倒 主役は私」に集約されると思うのですが、やはり自分の気持ちに素直に生きたいんですよね。
また、東日本大震災の際に、代々受け継いできた墓も、畑も津波で流されてしまう光景を見てしまうと、人生って儚いなと思うんです。だからこそ、最期の時に後悔しても後の祭りですよね。
だから、私もやりたいと思ったことはやることにしましたし、そう思いきることができたからこそ、本を書く決心ができたのだと思います。そして、これからいろいろな道を選ぶことになるであろう子どもたちには、なるべく自分がしたいようにしてほしいなと思います。それが実は一番書きたかったことかもしれない。
――「あとがき」は3月に書かれた文章で、新型コロナウイルスにも触れています。このコロナ禍を機に、何を大切にすべきか考え直すきっかけになっている人もいると思いますが、雅子さんはどのように思われていますか?
雅子:人生てんでんこ。ブログにも書いたのですが、今、岸恵子さんが日経新聞で「私の履歴書」を連載しているのですが、戦争中、防空壕を直感で飛び出して、九死に一生を得たという話があったんです。
結局、自分の人生を守るのは自分しかいない。自分で間違えたものは仕方ないけれど、人に言われてその言いつけを守って、自分の人生が台無しになるのは嫌じゃないですか。誰のせいにもできないし、誰も守ってはくれない。人は誰もが、最終的には自分が一番。だから、自分のことは自分が守るしかないです。
もっと冒険すればよかったと思うなら、そうしたほうがいいでしょう。人のせいにせず、自分で考えて行動する。失敗したら七転び八起きで、転んでもただでは起きない。それをモットーに精一杯生きたいなと思います。
――雅子さんの猪突猛進ぶりは憧れます。自分は考えちゃって動けないです。その足枷をどう外せばいいのかアドバイスをください。
雅子:それはまだ若いからだと思います。年齢は大きいと思います。54歳にもなると、切羽詰まって、やるものもやらないといけなくなるんですよ(笑)。お尻に火がつく感じですね。
――本書は読み手の年齢によって印象が変わるエッセイだと思います。同世代の方とどんなメッセージを送りたいですか?
雅子:私以上に魅力的なアラフィフはたくさんいますし、でもその一方でみんな、人生の役割をひと段落して、これからどうしよう、何かしなきゃと悩んでいると思います。そういう人たちに読んでもらって「あ、一緒だ」って思ってほしいですね。そして、悩んでいることを共有したり、励ましあえたりできたらいいなと思います。
――最後に、どんな人にこの本を読んでほしいとお考えですか?
雅子:私と同世代の女性たちはもとより、娘達世代の若い人、子育てに奮闘中のお母さん達、嫁姑、親の介護、親との別れ、いろいろな悩みを抱えながら生きているすべての女性に読んでいただきたいです。
また、男性にも読んでいただいて50歳の女性がどんなことを考えているのか知ってもらいたいです。そして感想を聞かせてもらえたら嬉しいです。
(了)
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