外出自粛が要請されている今、外に飲みに行くこともなくなり、ストレスが溜まっているという人も少なくないだろう。
かく言う筆者もその一人。
あの駅のすぐの、あの大衆居酒屋で、酒を飲み、焼き鳥をほおばり、濃い味の煮込みを食べて、「美味い」と小さな幸せを感じたい...。
そんなとき、つい本棚から手に取ってしまうのが『大衆酒場の作法 煮込み編』(扶桑社刊)だ。
浅草キッドの"玉ちゃん"こと玉袋筋太郎さんプレゼンツ、大衆酒場の酸いも甘いも嚙み分けた男が東京の数々の名店と「煮込み」を紹介。そこで繰り広げられる豊かな時間を語り尽くす、呑兵衛たちに贈られた一冊である。
まず登場するのは、吉祥寺に構える「いせや総本店」。
昼の12時から一杯引っかけているお客さんたちを見て、玉袋さんは「なんだろここは......番所だね。その街その街にこういう店がないと。関所でもあり、番所でもあり、門番でもある」と太鼓判。
道路側の軒先はカウンターとなっており、そこで立ち飲みをしているオヤジさんたちも店の一部。玉袋さんが持っているグラスにつがれたビールの美味しそうなこと! もちろん、中にはお座敷やテーブル席もある。人気の「煮込み」は360円。プリプリの食感のモツと出汁の相性はバツグンだ。
吉祥寺の隣駅、三鷹にある「三鷹のやまちゃん本店」のページでは玉袋さんとともに、煮込みオンリーのインスタグラムアカウント「煮込み百景」を運営する玉さん認定「煮込ミスト」・はしもときょうへいさんの姿もうかがえる。
この2人の酒場談義は大変興味深い。
例えば酒場好きの「酒場センサー」。それは、彼らが良い酒場を見つけられる"武器"だが、簡単に身につけられるものではないと玉袋さんは言う。
玉袋:嗅覚が磨かれていくんですよ、俺たちはネットとかに頼らない。ネットとかに頼って美味しいとこ行くのは簡単だよ。それやっちゃうとセンサーが鈍っちゃうんだよ。だからやっぱり、自分の嗅覚で行くわけだ。
きょ:いい店はオーラを醸し出している!(p.27より引用)
もちろん、お店の合う、合わないはあるし、入ってみたら失敗...ということもある。しかし、きょうへいさんが「行かなきゃ始まらない」と述べている通り、センサーの感度を高くするためには、経験を積み上げていくしかないのだ。
◇
本書は「煮込み編」とあるように、それぞれの店の紹介メニューの一品に「煮込み」が登場している。その美味しそうなこと...。
実は、この「煮込み」は料理の一つであるとともに、酒場にとっての大切なキーワードだと玉袋さんは語る。それは、酒場には店側も客側も込み込みのお互いのコミュニケーション「煮込みケーション」が存在するということだ。たまたま隣になったお客さんやお店の人との予期せぬコミュニケーション。そうした関係が酒場の味わいを深くしていくのである。
大衆酒場ラバーの端くれとしては、この外出自粛の状況はもどかしい。
だからこそ、家の中で飲むときは、本書を開いて玉袋さんの粋な言葉を楽しみつつ、酒場に想いを馳せてみてはいかがだろうか。そして、掲載された写真から酒場の雰囲気を感じることで、味気ない家飲みが楽しくなるかもしれない。
そして、外出自粛が解かれたら、目を付けていたあの駅のあの店に足を運ぼうではないか。
(新刊JP編集部)
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