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12球団監督のうち5人が教え子 野村克也の人を育てる秘訣とは!?

  • 書名 『超一流プロ野球大論』
  • 監修・編集・著者名野村克也、江本孟紀
  • 出版社名徳間書店

現役時代、監督時代共に数々の大記録を残した野村克也氏が、2020年2月11日、この世を去った。「野村I D野球」「野村再生工場」で1990年代のヤクルトスワローズ黄金期を築き、昭和、平成のプロ野球界を盛り上げた大功労者の一人である。

■プロ野球監督に「野村チルドレン」が激増したワケ

くしくも野村氏の最後の対談本となったのが、本書『超一流プロ野球大論』(野村克也、江本孟紀著、徳間書店刊)だ。

対談相手は南海ホークス時代にバッテリーを組んでいた江本孟紀氏。本書の中で、野村氏は江本氏について「南海プレーイング・マネージャー時代8年、ヤクルト監督9年、阪神監督3年、楽天監督4年。ワシが育てた数多くいる『野村学校』生徒の中でも、南海時代の選手は言わば『第1期卒業生』だ。江本は『首席』で卒業し、またワシに意見できる唯一の卒業生と言っても過言ではない」と語っている。

対談では、野球の真髄や当時の裏話、12球団それぞれの今後について、野村氏と江本氏がたっぷり語り合う。

江本氏も野村氏の教え子の一人だが、今シーズンの12球団の監督には、矢野耀大(阪神)、高津臣吾(ヤクルト)、辻発彦(西武)、三木肇(楽天)、栗山英樹(日本ハム)の5人もの「野村チルドレン」がいる。1軍監督だけでなく、2軍監督やコーチ、野球解説者など、現役引退後も野球界で活躍している野村氏の教え子は多い。

なぜ「野村のDNA」は、多くの教え子たちに浸透するのか。監督時代、野村氏の座るベンチの席のすぐそばが、いつもそのチームの正捕手の指定席というのがお決まりだった。ヤクルト時代には古田敦也、楽天時代には嶋基宏(現・ヤクルト)が野村氏のすぐ近くに座り、投手が打たれたときには野村氏の横に立たされてお説教する場面はプロ野球ファンにお馴染みの光景だった。

ときには2時間にも及んだというその「お説教」では、ときに厳しい言葉をぶつけることもあった。ただ、野村氏は選手を叱ったときに、いつも反省し、「感情で怒っていないか、愛情で叱っているか」自問自答していたようだ。

怒るのではなく、叱ること。「叱る」と「ほめる」は同義語。「この子を本当に良くしてやりたい」という愛情をもって接すれば、人間だから必ず思いは通じる、と野村氏は語っている。これはスポーツ界だけでなく、部下を持つ会社員にも言えることだろう。

選手への「愛」があり、それが選手にも伝わっているからこそ、野村氏の教えは受け継がれているのだ。

江本氏は本書のあとがきにて、野村氏のことを野球があれば幸せな人、ほかのことを考えなくて生きてこられた人、という意味で「野球幸福人」と表現している。野村氏の野球愛も教え子たちに伝わっていたのだろうか。

「日本プロ野球は『超一流』の選ばれし者たち。なのに、物足りないことばかり」と本書にはあるが、こんな野村氏のぼやき節も今となってはなつかしい。プロ野球論を目一杯楽しめる1冊だ。

(T.N/新刊JP編集部)

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