読むべき本、見逃していない?

ネガティブな思考にとらわれたら、まずは一呼吸。イライラを脱するために

  • 書名 怒りにとらわれないマインドフルネス
  • 監修・編集・著者名藤井 英雄
  • 出版社名大和書房

怒りにとらわれてしまい、強く人にあたる。
カッとなってすぐどこかに言葉を吐き出す。

言葉をぶつけられた方は深く傷つき、そうしてしまった自分自身も後々に自責の念にかられ...。そんな負の状態から、どう抜け出せばいいのか。もっといえば、怒りにとらわれてしまう自分を変えることはできないのか。

『怒りにとらわれないマインドフルネス』(大和書房刊)の著者で、40年の瞑想歴がある精神科医・藤井英雄さんに、ここでは怒りを客観視するためのマインドフルネスの方法を教えてもらっている。
ネガティブな感情すべてに応用できるので、ぜひ参考にしてほしい。

■ネガティブな思考にとらわれたら、まずは一呼吸

――個人的な悩みがあるのですが、嫌なことをずっと思い出して自分にいらついてしまったり、誰かの悪口を言ってしまったりすることがあります。こうした怒りや不快な感情もマインドフルネスで解決できるのでしょうか。

藤井:嫌なことを思い出してイライラしている時、自分の心が「今、ここ」を離れて過去にさまよっているので、イライラしていることには気付いていません。だからずっとイライラすることを無防備に考え続けてしまうんです。

マインドフルネスとは「今、ここ」の気づきであり、「自分は過去のことを考えてイライラしているなあ」と気づいている状態です。そのマインドフルな気づきが継続できれば、嫌なことを思い出している自分を客観視でき、やがてイライラは鎮静するでしょう。
もしくは単に嫌なことを考え続けるのをやめてしまうかもしれません。その場合もイライラは静まります。

――確かにイライラしているときって、過去のことばかり追いかけていて、今を見ている感じではないですね。

藤井:過去の嫌な出来事ばかり追うのではなく、怒りや不快な感情を「今、ここ」の現実として捉えてみたらどうでしょう? 上司やパートナーの理不尽な言動が怒りの原因なら、自分を殺してまで我慢するのではなく、怒りをまじえずに冷静に「ノー」と言えれば怒りの感情は静まります。

「今、ここ」で、必要のない怒りの元になるネガティブ思考をやめること。そして、怒りの元にたいして「今、ここ」で必要な対処をすることは、どちらもマインドフネスの結果として得られるんです。

――本書の中にある、「感情は一巡する」という考え方は興味深かったです。感情は悲しみから恐れに変わり、そして怒りに変わっていくと藤井さんはご指摘されていますが、これは悲しみを断つことが怒らない秘訣と考えていいのでしょうか。

藤井:かなりの比率で、一次感情としての悲しみや恐れが怒りの原因となっています。その根底にあるのは幼いころからの傷つき体験と自己肯定感の弱さです。今ここにあらわれた怒りだけに焦点をあて、6秒数えて深呼吸して怒りを抑圧したり、リラクゼーションのテクニックを使ったりしても、根本の原因を断ち切らなければ怒りはすぐに再燃するでしょう。

怒りは悲しみと恐れを放置したために、今ここに現れているだけです。無視された悲しみと恐れが「気づいてくれ」と言っているんです。今ここに現れた怒りを通して、怒りの奥にある悲しみを癒し、恐れを乗り越えた時に自己肯定感が回復します。そして、怒りが喜びにつながり一巡するわけです。

――第2章で、怒りを鎮めるマインドフルネス瞑想が紹介されています。10秒で行う瞑想ですが、なかなか心が落ち着かないときは10秒以上やっても良いのでしょうか。

藤井:マインドフルネス上達の秘訣は、と聞かれれば、私は迷わず「毎日継続すること!」と答えます。10年ほど前にマインドフルネスの指導を始めた頃からずっとセミナーでも個人セッションでもそう言い続けてきました。

ですが、実はこの継続が難しいんです。30分、1時間も瞑想をする時間を確保できない。落ち着ける場所でゆっくり座ってやろうと思うと億劫になる。そうおっしゃる方が多かったのです。実際、私も毎日30分、時間と場所を決めて瞑想することになれば長続きしないでしょう。

――では、藤井さんが瞑想を続けられている理由はなんでしょうか?

藤井:私が20年以上毎日瞑想を続けられるのは、思い切りハードルを下げているからです。

10秒どころか、たった一呼吸、マインドフルに呼吸するだけ。それも場所や時間にとらわれずに思いついた時にやることにしています。ここまでハードルを下げれば、さすがに瞑想することは苦になりません。そして毎日続けていることは習慣になります。歯磨きと同じレベルで習慣化します。

いったん歯磨きが習慣化すれば、歯磨きをしない日は逆に落ち着かなくなりますよね。瞑想も同じです。習慣化するまでは思い切りハードルを下げてしまってください。それでゆとりがあれば2呼吸、3呼吸と伸ばしていきます。

瞑想は「今、ここ」に心を結び付け、すべてのストレスから解放されるので、本来とても気持ちがいいものです。
そして、気が向いたらもっと長時間の瞑想に取り組んでみてください。ただ、「昨日は気がのったので10分やった。今日も10分やらねば!」となると本末転倒になります。だから当分は、習慣化するまではノルマは10秒としておく方がいいでしょうね。

――なるほど。では、場所も時間も回数もそこまで気にしなくていいわけですね。

藤井:はい。本書で書いている10秒マインドフルネスは、あくまで継続のための手段ですから、10秒にこだわることもありませんし、1日1回に制限する必要もありません。思いついた時にはいつでも10秒、マインドフルに時を過ごせばいいのです。

ただ、このタイミングで必ず瞑想をすると決めておくことは習慣化のために役に立つこともあります。

たとえば目が覚めて布団の中で、歯を磨くときに最初の10秒をマインドフルに、扉を開ける時はマインドフルに一呼吸するとか、ご自分の好きなタイミングで10秒マインドフルネスを創り出すことができます。

でも、あまりこだわらない方がいいように思いますね。忘れたときに「しまった!忘れていた」と悔やむことになりますから。もしも悔やんでしまったときには、自分は今、しまったと思い悔やんでいると客観視しておくこと。それがその時点でのマインドフルネスになります。

――藤井さんは40年の瞑想歴を持ち、25年以上マインドフルネス瞑想を実践されてきました。マインドフルネス瞑想をはじめて明確に変わったと思う部分はなんですか?

藤井:最初はわけも分からず瞑想をしていました(笑)。ただ、瞑想とは何かを正しく理解したのはマインドフルネス瞑想を始めてからですね。

それまではネガティブ思考にとらわれることが多くて、その理由で瞑想を始めたのですが、その時はまだ瞑想によって波立った感情を抑えること、すなわちリラクゼーションが瞑想だと勘違いしていました。それは先ほど言ったように、ネガティブな思考にフタをしているだけなんです。

それが、マインドフルネス瞑想を始めてから、自分のネガティブな思考を客観視して手放し、癒す方法を学ぶことができました。「今、ここ」の自分の思考と感情を客観視することが、過去の傷ついた悲しみや、深く隠され気づくことのできなかった恐れまでを客観視でき、まるごと手放せるようになったんです。そこで生きることがだいぶラクになりましたね。

――どのくらい続けることで変化を感じられるようになるのでしょうか?

藤井:どのくらい続けたら変化を感じられるか、ではなく、変化を感じるまで継続することが大切です。

ただ、それでも目安がほしいという方もいると思いますので、まずは一ヶ月続けていただきたいです。一ヶ月続けられたらそれは習慣化できるはずです。そして、習慣にしてしまえば、変化を感じる日も近づいてくるでしょう。

――本書『怒りにとらわれないマインドフルネス』をどのような方に読んでほしいですか。

藤井:本書のテーマは「怒り」ですから、まずは「怒り」で困っている人に読んでいただきたいですね。怒りを抑えることができず、キレてしまう人は、マインドフルネス瞑想を続けることで怒りの問題から解放されると思います。

次に、めったに怒らない人。つまり、怒りを抑えることに成功している人です。このタイプも危険なんです。我慢には限界があり、我慢強いほど心の中のストレスがたまりやすいといえるでしょう。マインドフルネスによって「今、ここ」のちいさな不満に気づき、そしてその小さな不満をためずに、怒りにまで育つ前に解消していくことが大切です。マインドフルネスはそのための武器になるでしょう。

マインドフルネスのように生きるための基本的なツールは、すべての人に身につけてほしいと思います。それも人生のうちになるべく早い段階で身につければ、傷をため込むこともなく、軌道修正できるでしょう。だから、なるべく若い人に読んでいただきたいですね。

そして今は、このマインドフルネスを小学生の高学年の皆さんにも習慣づけてもらいたいと、本を執筆しています。そちらもぜひ注目してください。

(新刊JP編集部)

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