学歴社会である日本において、どんな教育を受けるかは、人生を大きく左右する一大事。
しかし、この日本にはあらゆる「教育格差」が存在する。たとえば、小学校入学時点で、すでに子供たちの間には学力格差があるし、公立の中学校同士でもその環境に格差がある。一見平等に見えても、現実は決してそうなってはいない。
そのような事実を徹底的なデータ分析から炙り出すのが、教育社会学者の松岡亮二氏の著書『教育格差』(ちくま新書)である。刊行後たちまち4刷と大きな反響を得ている本書から、日本の教育における格差の一端を紹介しよう。
まず、驚くべきは義務教育が始まる前に子供たちの間には教育格差があり、それが小学校入学時点ですでに学力格差となって存在していることである。これには様々な要因との関連が見出せる。たとえば習い事の利用率が「生まれ」(親の学歴や居住地域)によって違うことなど、就学前の約6年間の過ごし方が子供によって異なることと関連している。
こうして小学校入学前に始まった格差は、小学校、そして中学校に進んでも縮まらず、やがてはっきりと学力によってコースが分けられる高校へと至るのである。
日本の義務教育は、学習指導要領や教員免許制度などにより、「平等的」と国際的には評価されている。しかし、この「平等的」な制度も、すでに生じてしまっている様々な教育格差を縮めるほどの力は持っていない。そして国際的な学力調査(PISA)の報告書によれば、「生まれ」による学力格差の度合いは、日本は、OECD諸国のなかでとくに高いわけでも低いわけでもない、極めて「凡庸」な結果となっている。とくにすぐれて日本の義務教育が「平等的」なわけではないのである。
いま挙げた「教育格差」の事例は、本書のほんの一部である。詳しくは実際に本でご確認いただきたいが、本書を一冊通して読み、この国の「教育格差」の実態を知ると、極めて重たい気分を味わうだろう。親の学歴や居住地域など「生まれ」により可能性を奪われる子供たちが、本当に多く存在するのだから。
ただ本書は、そのような冷酷な事実を、データをもとに描きだすだけでなく、少しでも改善するために、取るべき現実的な対策も提案している。より明るい未来をつくるために、まずは本書で現実を知ることから始めてみるとよいかもしれない。
(新刊JP編集部)
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