ある朝、目が覚めると、体が金縛りのように動かなくなっていた。
自分のことを「奴隷」呼ばわりする上司のパワハラに耐えながら、毎日を過ごしていたマサユキ。妻と息子もおり、2年前に会社から通勤片道2時間のマンションを購入したばかり。なんとかこれまでやってきたものの、「もっと死ぬ気でやれ」と言われ続けた心身は限界を迎えていた。
ここで休まなければ、自分は本当に死ぬ――。高熱が出たと嘘をついて会社を休み、精神科で診察を受けたマサユキは「うつ病」という診断を受ける。
そして、意を決し「当分の間休みます」と上司に連絡を入れた後、すべての連絡手段を遮断し、スピリチュアルに詳しい友人のアドバイスをもとに一人旅に出かけた。
目的地は高野山・奥之院。
そこで彼はとんでもないものに出会うことになる。
これは人気ブロガーで、スピリチュアル関連のイベントを多く手掛けるSHINGO氏が執筆した『夢をかなえる龍』(光文社刊)の序盤のあらすじであり、そのベースになっているのは彼自身が経験した実話である。
SHINGO氏は上場企業に14年勤務したが、ストレスと過労で体調不良に。そして、マサユキと同じように高野山・奥之院に向かい、「龍神」と出会う経験をしたという。
そう、作中でマサユキが出会ったとんでもないものとは、「龍」なのである。
本作は天から遣わされた龍"コハク"とのやりとりを通して、マサユキが自分自身の人生を歩んでいくストーリーだ。
何事にも消極的で、なかなか周囲に目を向けないマサユキだったが、龍からのメッセージを受け取っていく中で少しずつ成長していく。コハクとマサユキの軽妙なやり取りも本作の読みどころの一つなのだが、ここではマサユキが学んだ「龍の知恵」について紹介しよう。
「龍の知恵」とは、コハクがマサユキに授けた11個のスピリチュアルな知恵のことだ。
それまで自分の力で生きてきたマサユキに対して、龍は別の視点を通した気づきを与え、人生がより上向くように行動を促す。
その11個の知恵とは次の通りだ。
(1)「ポンコツであれ」
(2)「キョロキョロする」
(3)「龍神スタンプカード」
(4)「気のせいをやめる」
(5)「龍神さまと同じことをする」
(6)「『流れ』が来たら『えいっ!』と乗る」
(7)「愛を分かち合う」
(8)「肉眼で龍やオーラを見る」
(9)「セルフ龍つなぎ」
(10)「すべては最善である」
(11)「私にはパワーがある」
例えば(1)の「ポンコツであれ」。これは余裕がなくなり周囲が見えなくなってしまう状況から抜け出すための知恵だ。ちょっと間抜けなくらい「ポンコツ」であったほうが、肩の力を抜いてリラックスできる。コハクはマサユキにこうアドバイスする。
「君はもっと安心しなさい。不安なものを見ると、君の見るものは不安なものになる。安心するものを見ると、君の見るものは安心できるものになる。心穏やかに安心することだ」(p.72より引用)
不安な気持ちに苛まれている人は、自分からすすんで不安なものばかり見てはいないだろうか。こういうときこそ力を抜いてポンコツになり、安心なものを見るようにすべきなのだ。
また、(2)の「キョロキョロする」も実用的だ。世の中には様々なサインが自分に向けられている。車のバックナンバーの数字であったり、人の名前であったり、何かのシンボルであったり。なぜかよく目につくもの。奇妙な一致を「シンクロニシティ」と呼ぶが、そのシンクロニシティに気づくには「キョロキョロする」ことが大事。そのサインをキャッチすることが人生を豊かにするためのきっかけとなるのだ。
◇
前述の通り、本作はストーリー形式で書かれており、肩肘張らずに読むことができる。
自分の人生が上手くいっていないと感じるときは、たいてい視野が狭くなっているもの。リラックスをして肩の力を抜き、もっと周囲を見てみる。「ポンコツになる」ことも「キョロキョロする」ことも、上手くいかない自分を脱するための手段なのだ。
もし、今の自分を変えたいと思うなら、おおいにヒントを受け取ることができるはずだ。
(新刊JP編集部)
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