かつてはテレビ番組「解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ)で芸能人のディープな悩みを鮮やかに解決してお茶の間の人気を独占、その後も講演会やセミナーで全国を飛び回る傍ら、みずから作詞・作曲したオリジナルアルバムを精力的に発表し続けている。そして2017年には武道館単独ライブまでも実現し、現在、著書は累計部数450万部に達する心屋仁之助氏。
自らのビジョンを次々に実現し続ける心屋氏が、このたび新刊『心屋流 ちょっと変わった夢の叶え方』(学研プラス刊)を刊行した。
「夢実現スペシャリスト」とも呼ぶべき心屋氏に「夢の叶え方」についてインタビューをしたところ、「夢なんて、持ってなくても大丈夫です!」と意外なアドバイスが返ってきた。え? どうして? そこには、ちょっと不思議な理由があった――。
(構成/福島結実子 撮影/干川修)
心屋:ええとね、まず、武道館公演って、僕にとっては、いわゆる「夢」じゃなかったんです。世間的にいう「夢」が、努力して追い求めて叶えるものだとしたら、それとはまったく違う。
心屋:「そうなったら、おもしろいだろうな〜」って、なんとなく考えていること。冗談みたいに「いつかは武道館」「カウンセラーが武道館で講演したら、おもしろいよね」って言いながら講演会をやったり、セミナーをやったり、そのうち歌をつくって人前で歌ったりCDを出したりもして......。そうこうしているうちに、武道館が本当に実現してしまった。そんな感じです。
心屋:世の中には、大きな夢があったほうが行動しやすい人と、大きな夢がないほうが行動しやすい人がいるんです。「夢に向かってがんばる人生は素晴らしい」「あなたの夢は何なの?」「夢を応援します!」って言うような人は、夢があったほうが生きやすい人。
でも、そのいっぽうで、「あなたの夢は何ですか?」「夢に向かってがんばれ!」なんて言われると困ったり苦しくなっちゃったりする人もいる。
心屋:うん、「夢」を持っている人って、そんなにたくさんはいないですよ。大きな夢があったほうが生きやすい人と、そうでない人は、たぶん半々くらいの割合でしょう。
夢がない人は、別になくたっていいんです。それなのに「夢を持て!」「夢に向かってがんばれ!」という声に押されて、「何か夢を持ったほうがいいのかな」「夢を語れない自分はダメなのかな」なんて考えちゃう。......たとえば何か、ものすごく好きなことってありますか?
心屋:でも、人にものすごく熱く語りたいことって、あります?
心屋:でしょ。それは僕が最近、言っているところの「ふーん族」の特徴なんです。その反対は「めっちゃ族」。
心屋:「めっちゃ族」は、自分が体験したことや考えたこと、感じたことをシェアしたい人たち。「大好き!」「大嫌い!」「めっちゃうれしい!」「めっちゃ腹立つ!」という振れ幅が大きくて、なおかつ人に伝えないと気が済まない。いっぽうの「ふーん族」は、そういう起伏があまりなくて、ひとことでいうと平和な人たち。激しく感動することもあまりないけど、激しく腹を立てることもあまりない。
心屋:「めっちゃ族」は、大きな夢とか目標があったほうが生きやすい人が多いでしょうね。夢に期限を決めて「まず第一歩として、何々をする!」なんて宣言して、夢を追いかけて、人ともガンガン語り合う。「夢って素晴らしいじゃないか」「君の夢は何だい?」なんて聞いてくるのも、たいていは「めっちゃ族」です。こういう人が、お酒を飲んで盛り上がった勢いで、深夜に友だちに電話して「今から来なよ!」なんて無茶を言ったりする(笑)
心屋:「なんやテンション低いなー」なんて言われてね。ごめんなさいね(笑)
心屋:そう、「めっちゃ族」なんです。熱く語るほどの夢はないんだけど、「こういう考え方したら生きやすくなるよ」とか、それこそ、ここで言ってるように「『めっちゃ族』と『ふーん族』に分けたらわかりやすい!」なんて考えると、みんなに発信したくてたまらなくなっちゃう。こんなふうに「めっちゃ族」は熱く語りたい人たちだから、どうしても声が大きくなるんですね。
心屋:そう。でも、みんなにおいて行かれたくないから、「夢は何だい?」なんて聞かれると、つい勢いに押されて、「いいね」がもらえそうな夢を無理やり言ったりしてしまう。それでやり過ごしてホッとしたかと思ったら、今度は「じゃあ、それを叶えるために今から何をする?」なんて突っ込まれて、余計に困っちゃったりしてね。
心屋:本当はそれでいいはずなんです。だって「今のままでいい」ってすごく幸せなことでしょう? 無理して夢を追い求める必要なんてないのに、「夢」という言葉の強さや美しさに圧倒されてしまうんですね。
「夢を叶える」系の自己啓発セミナーに行く人は、すでに大きな夢があって、それを叶える方法を知るために参加する人ばかりじゃない。「夢はあったほうがいいんだ」と思いこんで、もともと自分の中に存在しない「夢」を見つけるために参加している人も多いんじゃないかと思います。よく考えてみると、「夢を」「見つける」ってどういうこと......? って思いますけどね。
心屋:「何か夢みたいなものが見つかるかもしれない」って参加して、夢を熱く語る人たちを目の当たりにして、よけいに苦しくなっちゃう。「夢があったほうがいいんだろうな」「夢がない私って何なんだろう」「楽しく人生を生きてないのかな」というナゾの劣等感を持ってしまうんですね。でも「ない」なら「ない」でいいんです。さっきも言ったように、「夢がない」っていうことは「平和」なのだから。
心屋;それはちょっと違いますね。要は、山登りしたい人と、草原をプラプラ歩きたい人は違うっていうだけの話です。山登りしたい人は放っておいても山を登る。それも、前に登った山より厳しい山、さらに厳しい山へとハードルを上げて、死にそうな思いをしてでも登頂することに喜びを感じる。もともとハードな生き方が好きなんです。そんなふうに「めっちゃ族」は、放っておいても夢らしきものを見つけて騒ぐ。何かを埋めるためではなくて、勝手に大きな夢を抱いてしまう人が多いんです。
一方、草原をプラプラ歩きたい「ふーん族」は、ハードな生き方じゃないほうが幸せ、なだらかな生き方が好きということ。
心屋:そうです。だから「夢」にとらわれやすいのは、草原をプラプラ歩きたい人のほうかもしれません。草原プラプラのほうが好きなのに「そんなんじゃダメだ」っていう劣等感をもって、無理やり山登りしようとしてしまう。「夢がない自分は欠けている」と思うから、何とか夢を持って埋めようとするわけです。
心屋:そりゃそうだよね。ハードな山登りが好きな「めっちゃ族」はシェアしたい人たちなわけで、どんどんSNSでも発信するから。でも「ふーん族」にはそういう欲がないから、あまり発信しない。結果、ただでさえ小さな「ふーん族」の声は、どんどん「めっちゃ族」の大きな声にかき消されていくんです。
心屋:「めっちゃ族」は、とにかく「うおー!」って騒ぎたいんです。「うおー! これやりたい!」「うおー! うれしい!」って言いたい人たちだから、ただ言わせておけばいい(笑)。で、「ふーん族」の人たちは、生来のとおり「ふーん」って言っていればいいんです。それこそ草原のような、なだらかな気持ちで「ふーん、なんかこれ、いいね〜」「ふーん、なんかこれは、ちょっと嫌だなあ」って。
そうしていると、たまに心から「あ、これはめっちゃいい!」って思うものに出会ったりする。もしかしたら、それが夢の始まりかもしれないから、「あ!」っていうものに出会ったら、そっちに進んでみればいいんですね。それに実際、「ふーん族」って目立たないだけで、じつはすごいんですよ。
心屋:「めっちゃ族」の発信を見ていると、やっぱり「うおー!」って言いながら生きている人のほうが人生を楽しんでいるように見えますよね。人に夢を語りまくって、周りの人を巻き込んで、いっぱい協力してもらえる人こそが成功する人なんだ――なんて思ってません?
心屋:それがね、じつは「ふーん」って言いながら大きく成功している人もたくさんいるんです。「めっちゃ族」の成功のほうが、彼ら自身が騒ぐから目立っているだけなの。しかも「めっちゃ族」がガーッとうまくいって、ガクンと落ち込んで、また盛り返したと思ったら、また困難に見舞われて......っていう山あり谷ありの人生を歩んでいる横で、「ふーん族」はスーーーーーーーーーーッて、まるでエスカレーター式のように成功することが多い。そういう人を紹介しても、いまひとつ盛り上がらないから、メディアで取り上げられないだけなんですね。
心屋:そう。「めっちゃ族」の人の人生は簡単にドラマになるけど、「ふーん族」の人生はドラマにしづらい(笑)。「どうやってここまで成功したんですか?」と聞かれたところで、「えーっと、いろいろあった気もしますけど......、いろんな方のおかげです。これからもよろしくお願いします」なんて、ひと言で終わっちゃいますからね。
心屋:(笑)とにかく、世の中には大きな夢や目標を抱いて、苦労の末に成功するタイプの人もいるというだけの話で、何となーく、スーッとうまくいっている人もいっぱいいるんだって知ってほしいですね。これは、どちらのほうがより成功しやすいとか、よりよいっていう話ではなくて、ただ「こういう生き方が好き、生きやすい」というものが生来、違うだけ。夢がある人は夢を追いかければいいし、夢がない人は、そのまま平和に生きたらいいんです。
(「後編」につづく)
(撮影協力/ストリングスホテル東京インターコンチネンタル)
心理カウンセラー。個性を生かして性格を変え、自分らしく生きるための手助けをする「性格リフォームの匠」として、テレビ出演でも話題になる。
大手企業の管理職として働いていたが、自分や家族の問題がきっかけとなり、心理療法を学び始める。現在は京都を拠点として、全国各地でセミナー、講演活動やカウンセリングスクールを運営。その独自の「言ってみる」カウンセリングスタイルは、たったの数分で心が楽になり、現実まで変わると評判。現在、個人カウンセリングは行っていないが、スクール卒業生により全国各地で心屋流心理学のセミナーやボランティアでのグループカウンセリングが広く展開されている。
著書の累計発行部数は450万部を突破。公式ブログ「心が風に、なる」は、月間1000万アクセスを記録する人気ブログ。
公式ホームページ「心屋」で検索 https://www.kokoro-ya.jp/
公式ブログ「心が風に、なる」 https://ameblo.jp/kokoro-ya/
『心屋流 ちょっと変わった夢の叶え方』
心屋仁之助著、学研プラス刊
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