年齢を追うごとに悩みが大きくなる体の調子。その一つが「尿失禁」や「頻尿」といった尿トラブルです。
原因の一つとしてあげられているのが、排尿をコントロールする「骨盤底筋」という筋肉の衰えです。誰でも年齢を重ねるにつれて骨盤底筋は衰えていくもので、従来の骨盤底筋体操(ケーゲル体操)でも高齢者ほど回復が困難になるといいます。
その解決法のために、腰をリズミカルに弾ませるだけという全く新しい骨盤底筋トレーニング。これを生活の中に取り入れてみるのも手です。
『尿トラブルが自分でこっそり治せる!米国の専門医式ピフィラティス』(武田淳也著、わかさ出版刊)は、ピフィラティスの10運動の中でも、特に骨盤底筋を鍛える効果の高い3運動を紹介している一冊。3運動を全部行っても、所要時間はわずか5分です。
また、5分も時間が取れない人、ひざ痛や腰痛の人、骨盤臓器脱の人のために、それぞれ1運動だけですむ特別メニューも紹介しています。
骨盤底筋は、骨盤の底にあって、まるでハンモックのように膀胱や尿道などの臓器を支えて排尿をコントロールしている重要な筋肉です。ところが、ほかの部位の筋肉と同様に、意識して鍛えなければ年々衰えてしまいます。
さらに骨盤底筋は、妊娠・出産によって負担がかかりやすい筋肉です。女性の中には出産後、尿失禁が起こる人がいますが、この原因は骨盤底筋にほかならないと著者の武田氏は言います。もちろん、徐々に回復しますが、完全に回復しないまま加齢が重なると、より深刻な尿トラブルを招くことにもつながります。
骨盤底筋は骨盤の底、つまり体の深部にあるため、非常に鍛えにくい筋肉です。従来のケーゲル体操では意識して骨盤底筋に力を入れる必要がありますが、高齢になるほど意識しにくく、なかなかトレーニング効果も現れません。また、泌尿器科の治療は対症療法であって、骨盤底筋そのものを鍛える根本療法ではありません。
そこで、ピフィラティスです。意識しなくても骨盤底筋を簡単に鍛えることができるといいます。
ピフィラティスでは腰をリズミカルに弾ませますが、実は、このスキップのような弾む動きがほかの運動と比べて骨盤底筋を鍛える効果が最も高いことが分かっていると本書。
意識せずとも骨盤底筋に力が加わるため、高齢者でも効率よく鍛えることができるのです。
ピフィラティスで鍛えられるのは、骨盤底筋だけではありません。
実は、排尿コントロールには、骨盤底筋が単独で働くわけではありません。骨盤底筋だけの力には限界があります。おなかの腹横筋、お尻の大殿筋、太ももの内転筋という3つの「協働筋」に協力してもらって働くことで、骨盤底筋は最大限の力を発揮することができるのです。
ピフィラティスを行えば、3つの協働筋も自然に鍛えられるので、尿トラブルの改善効果が高まることはいうまでもないでしょう。
本書によれば、尿トラブルの改善率は8割超で、改善が難しいとされる高齢者にも効果があり、平均年齢82.8歳の要支援・要介護の人の場合、ピフィラティスを始めてから3カ月後に54%の人が、6カ月後に62%の人が改善しているといいます(*1)
(*1)薬院通所リハビリテーションセンターによる試験の「尿もれによる日常生活への影響の評価(IIQ・7)」のデータ
ピフィラティス3運動のうち、1運動(ランジ)のやり方を紹介しましょう。この運動の骨盤底筋を鍛える効果は、従来のケーゲル体操と比べて最大41.4倍もあることがわかっています。
<準備運動>
1.両手は腰に当てて両足をこぶし1つ分開き、骨盤を立てて、直立する(①)。
2.片方の足を大きく1歩踏み出し(②)、①の姿勢に戻る。これを3回くり返す。
<姿勢キープ>
3.4回目に、片方の足を踏み出した状態になる(②)。この状態を3秒間キープ。
<リズム運動(パルス運動)>
4.②の姿勢で、ゆっくりと鼻から息を吸い、グッとため込む(③)。
5.次に、口から息を「ハッ」と短く吐きながら、腰を跳ね上げる(④)。ただし、腰を跳ね上げる④の動作は、跳ね上げる前の③の動作と連続して行い、息を「ハッ、ハッ、ハッ」と短く吐きながらリズミカルに3回くり返す。
※③の動作のとき、骨盤底筋を意識するとなおよい(意識できなくてもかまわない)。
鍛えておいた方がいい筋肉・骨盤底筋。ぜひケアをしてみてくださいね。
(新刊JP編集部)
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