急に遠くを見るとピントが合わない、パソコンを使った作業をしていると目が重くなる。
ひと昔前は、「目が悪くなる=年をとった証拠」だと言われていたが、最近はスマホやパソコンの普及で若い世代でも視力の衰えが顕著になってきているという。
人間は外部からの情報の8割を視覚情報で処理していると言われる。そんな日常生活でもっとも使っている「目」は、酷使し続ければどんどん衰えていく。そんな目の機能や視力の低下に悩んでいるなら読んでおきたい一冊が『いつでもどこでも目がよくなる小さな習慣』(今野清志著、大和書房刊)だ。
本書では、通勤・通学の時間帯にできる目のケアやトレーニング、仕事の合間にできるリラックス法や目にやさしい環境づくりのポイントが解説されている。その中から、会社や学校の行き帰りでできる目の癒し方、鍛え方を紹介していこう。
具体的なケアやトレーニング法を紹介する前に、簡単に目の機能や構造について知っておくといいだろう。
眼球の構造はカメラに例えられることが多い。眼球の表面を覆う「角膜」はレンズを保護するフィルター。瞳孔から入った光の屈折を調節する「水晶体」がレンズ。眼球の奥にある「網膜」がフィルムだ。
物を見てもぼやける人は、レンズである水晶体を伸び縮みさせる「毛様体筋」が衰えていたり疲れていたりするという。
パソコンやスマホなどを一定距離で見続けることは、「毛様体筋」を酷使してずっとピントを合わせ続けることを意味する。言ってみれば腕立て伏せの一番キツイ瞬間のポジションをずっと維持しているようなものだ。それで筋肉が疲れないはずはない。
そうやって酷使して凝り固まっている「毛様体筋」を、適度に休ませたり柔軟性を取り戻させたりすることが、目の疲れや視力の低下を改善する第一歩だ。
通勤・通学時間は、目の緊張をときほぐし、視力アップを図るには絶好のタイミングだという。
多くの人が、朝起きてから目にするものは、テレビ、スマホ、新聞など近くにあるものなので、毛様体筋は緊張しっぱなしだ。しかし、外に出れば自然と遠くを見るようになるので、目の緊張もゆるんでいく。
さらに、視力回復を図るためには、自分の目の状態を毎日確認できるほうがいい。
そのために、毎朝決まったものを決まった距離で見るようにするといいだろう。
通勤路、通学路の交差点やバス停などに、遠中近距離の3つのポイントを決め、視力チェックのランドマークにするのだ。たとえば、「遠くのビルの屋上にある看板」「それより少し手前の交通標識」「近くのバス停や表札の文字」と言った具合だ。
ランドマークをつくることで、視力が改善していったときにそのことを実感しやすくなるし、距離を変えてモノを見ることがすでにトレーニングにもなっている。まさに一石二鳥の方法だ。
電車に乗ると半分以上の人がスマホを見ているだろう。しかし、細かい文字を長い時間、固定したピントで見続けブルーライトを間近で浴びていたら、朝から目の疲労は溜まっていくばかり。
目にやさしい通勤電車の過ごし方は、目を閉じること。その際、過去に見たことのあるきれいな風景や楽しかった体験を思い浮かべると、脳も目覚め、リラックス効果も得られるという。
また、電車内で視力を鍛えるトレーニングをするなら、色々なモノを凝視するといい。
特に「中吊り広告」はうってつけだ。大きな活字、ほどほどの大きさの一文、さらにもっと小さな文字という具合に、徐々に読みにくいものを凝視するのが良いトレーニングになるのだ。
さらに、電車ならではのトレーニングが動体視力を鍛えること。
普段の生活では、なかなか速く動くものを見る機会がない。そこで、窓の外を流れる看板やビルの中の様子を見ていくのだ。
このような目のケアやトレーニングを習慣にしてしまえば、退屈な通勤時間もあっという間にすぎるはずだ。朝の電車ではトレーニング、夜の電車では目を閉じてケア、というように行きと帰りで使い分けてもいいだろう。
著者によれば、目の機能や視力が低下するのは、日々の生活習慣や環境、そして、筋肉や細胞にエネルギーを供給する酸素不足が原因にあるという。目や視力に悩みを抱える人は、一度、生活習慣や全体的な健康を見直してみるといいのかもしれない。
(ライター:大村 佑介)
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