社長が自ら年間約270日、社員と「飲みニケーション」を行なう企業がある。株式会社リビアスだ。同社は理美容業界において異例の多店舗経営(直営・フランチャイズ合わせて230以上)を展開している。この成功の裏には、代表取締役社長・大西昌宏氏による、優れた人材を育て上げる教育の仕組みがある。
大西氏の著書『人財教育、こうすれば、やめない、つづく、成長する!』(ダイヤモンド社刊)は、人材教育の大切さを説きながら、どのようにしてビジネスを広げてきたのかを社長自ら明かした一冊である。
理美容業界は離職率が高いことで知られ、常に人材不足で悩まされている業界でもある。本書によれば、理容専門学校の入学者数も、ピーク時は年間5000人くらいだったのが、現在では1000人を切るまでに減っているという。
こうした背景の中で、いかに人材を育て、長く戦力として働いてもらうか、経営者は頭を悩ませなければならない。また、理美容の仕事はお客様の髪を切って整えるだけではなく、コミュニケーションが重要である。技術はもちろんだが、サービスの精神を学べる環境をいかに提供できるかが大切だ。
大西氏は、リビアスは理美容業界で日本一、社員のためにお金を使っている会社だと自負する。
社員教育に力を入れるという方針は、まだ会社としてそれほど利益が出ていない時期に打ち立てたものだという。年間2000万円を社員教育費に使いたいと税理士に相談したところ、猛反対にあったそうだ。しかし、それでも大西氏は突き進むことにした。
これは、株式会社武蔵野の代表取締役社長・小山昇氏からの影響が大きく、大西氏は小山氏の「人の成長なくして企業の成長なし」「社員教育にお金を使わずに潰れていった会社はごまんとあるけれども、社員教育にお金を使いすぎて潰れた会社はない」といった言葉に強く共感を覚えたという。
理美容業界では、従業員をスタッフと呼ぶことが多い。しかし大西氏は、「パートナー」と呼ぶ。それは、以下のような教育と取り組みにより、価値観を共有し、同じ目的に向かって共に成長していく仲間という意識があるからだ。
そんなリビアスの社員教育には、次の三つがある。
まずは「専門教育」。
理美容業界における社員教育といえばこの「専門教育」を指すのが一般的で、カットなどの技術や知識、接客といった専門的スキルを教える。いくらコミュニケーションが重要だといっても、やはり技術がなければ客は離れていってしまう。つまりは「基礎」ということだ。
二つめは「マネージメント教育」だ。
こちらは数字や売上の向上を含めた、店舗運営のための教育だ。日頃から売上を意識するよう、徹底しているという。
そして三つめが「価値観教育」。
リビアスの場合、「専門教育」と「マネージメント教育」で社員教育の3割、残りの7割を「組織的価値観の共有」の教育にあてているという。つまり、リビアスの人材の強さを生んでいるのが、この「価値観教育」なのだ。大西氏は、「価値観を共有できれば、会社のことを好きになります。会社を好きになれば、会社のことを一生懸命に考え、共に成長したいと考えるようになります」と語っている。
本書を読んでいると、リビアスのユニークさ、多様さに驚かされる。
例えば「スーパー銭湯で1000円カット」という発想は目からウロコだろうし、「新卒大学生の採用」という方針は理美容業界では異例のこと。理美容業界は新卒の場合、その多くが高卒や専門学校卒での採用だからだ。
そんな中、リビアスは大卒採用を積極的に行ない、自らリビアスを気に入り、「この会社に入りたい」と思う新入社員を採用することに成功している。
「働き方改革」が叫ばれる昨今、経営者は社員が気持ち良く働ける環境をいかにつくるか、試行錯誤しなければいけない。「リビアスを働きやすい会社だと感じて、皆さんがいきいきと働いている姿が、今では私の仕事のモチベーションであり、誇り」と語る大西氏。「パートナー」を大切にするリビアスの取り組みは、非常に参考になるだろう。
(新刊JP編集部)
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