みなさん、こんにちは!鬼頭あゆみです。
インターネットラジオ「本が好きっ!」、第34回目のゲストとしてお越しいただいたのは『共謀 トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ』(集英社刊)で解説を執筆された、上智大学教授でアメリカ現代政治をご専門とされる前嶋和弘さんです。
このイギリスの著述家ルーク・ハーディング氏によるノンフィクションについて、前嶋さんにご感想をいただいたところ、次のような答えが。
「この本は、ずっと噂されてきたことを実に細かくジャーナリストの方が取材し、掘り起こしていった記録です。アメリカの政治の内容はこんなで、トランプさんはこんな問題があって、問題の骨子が実にわかりやすく書かれています。とても壮大な話で、まるでスパイ小説のような感じですね」
確かにスパイ映画のような印象を受けました。ですが、ここに書かれていることはノンフィクションなんですよね?
「まだ真実とは証明されていませんが、極めて本当らしい話だと思います。真実が点のようにあり、その点が線になってきているような感じもしますし、場合によっては面になってくる部分もあります。もしこれが全部真実だとすれば、トランプ大統領は弾劾裁判にまで追い込まれると思います」
読めば読むほど引き込まれていく本書...。ノンフィクションならではの具体性も高く、その点は前嶋さんも「よくここまで調べた、という本です」と評価します。
「この本では、事実を積み上げていく中で、黒い人脈をあぶりだしています。ベースとなっているスティール報告は、元MI6のスパイが書いたもの。MI6とはあの映画ジャームス・ボンドで有名なイギリスの諜報機関です。機密文書を扱うプロ集団で、トランプとロシアの関係を分析しています。ロシアとかかわることによってトランプ政権が生まれたと指摘しています」
「今のアメリカは、かつての南北戦争の時くらいに社会が分断されています。共和党を支持する保守層と、民主党を支持するリベラル層が交わる事なく社会に分かれて暮らしています。この二つの層は、没交渉で、全く話し合えていません。」
この「ロシアゲート問題」は、今後どのようになっていくのでしょうか? 前嶋さんに聞いてみました。
「トランプ内閣は一人残らずロシアとのつながりがある人ばかりです。ティラーソン元国務長官は、ロシアと深い関係がある石油メジャーのCEOを務めていました。プーチン大統領から勲章をもらったこともあります。ロシアと一対一でやりあえる人ということで選ばれたと言われていますが、この3月に辞任させられました。フリン前安全保障補佐官は、ロシアのプロパガンダ放送に出演してしまうようなロシアの息がかかった人として知られています」
「アメリカではこの秋に中間選挙があります。この本は、今後のアメリか政治の行方を先取りする意味でも大変興味深いです」
現在、アメリカとロシアの関係は決して良好ではありません。この原稿の書いている4月にも、アメリカが、ロシアが支援しているシリアを攻撃するというニュースが飛び込んできました。
今後の世界情勢、アメリカ政治の行方を占う上でも、ぜひ、「共謀 トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ」を読んでみてはいかがでしょう。
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