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子どもに科学を伝えて94年。伝統と最先端が共存する雑誌『子供の科学』に迫る

  • 書名 コンピューターってどんなしくみ?: デジタルテクノロジーやインターネットの世界を超図解
  • 監修・編集・著者名村井純、佐藤雅明監修
  • 出版社名誠文堂新光社
  • ISBN9784416518069

1924年(大正13年)創刊という古い歴史を持つ子ども向け専門雑誌があるのをご存知だろうか。
『子供の科学』(誠文堂新光社刊)だ。

子どもに最先端の科学を分かりやすく面白く伝えてきた本誌は、科学・技術界の著名人・研究者にも読者の「OB・OG」が多い。

今年4月には2020年度より小学生の科目で必修となる「プログラミング」をはじめとしたテーマを分かりやすく説明する単行本シリーズ「子供の科学★ミライサイエンス」を創刊。すでに店頭に並んでいる第1弾『コンピューターってどんなしくみ?』(村井純、佐藤雅明監修)を含め、6月までに4冊が刊行される。(ラインナップはこちらから

「伝統」と「最先端」が共存する、ある意味でカオスなこの『子供の科学』、そして新シリーズ「子供の科学★ミライサイエンス」について、編集長の土舘建太郎さんにお話をうかがった。

(取材・文:金井元貴)

■コアな読者は「クラスに一人か二人がいる突出した趣味を持った子」

――『子供の科学』は今年でなんと創刊94年を迎える老舗の専門雑誌です。どんな人が読者なんですか?

土舘:想定している年齢層は小学生高学年から中学生。クラスに一人か二人はいる突出した趣味を持っている子、工作や実験が好き、テクノロジーに詳しい、生物や宇宙の本をよく読んでいるというような子どもたちがコアな読者層です。さらに、その周辺でテーマごとに興味のある子どもたちも読んでいますね。

――内容としては、どのレベルまで掘り下げるのですか?

土舘:最近特に人気のあるテーマである「プログラミング」を例に説明しますと、4年くらい前から特集を組み始めました。最近は、別売りの「ジブン専用パソコンキット」を併用し、自分でパソコンをセットアップして、実際にプログラミングをしたり、ロボットキットを追加してプログラミングでロボットを動かしてみたりという連載を掲載しています。

プログラミングは主にScratchで行います。テキストでコードを書く必要がないので、初心者でも入りやすいというところがあります。だから、Scratchを使いこなせるようになった子どもから「次はArduinoを頑張ります」という投書が来ることもありますし、普通にテキスト言語を書ける子は(読者の中に)多くいると思います。

子どもたちは、プログラミングをやりたいというよりも、楽器を作りたいとか、ロボットを作りたいという興味から『子供の科学』に入ってくることが多いので、変数などの基本的な知識や考え方を教えてあげて、作れるものをどんどん増やしてあげるサポートをしているイメージです。

――コンピューターやテクノロジーだけではなく、取り扱う内容はまさに「サイエンス」全般です。

土舘:そうですね。科目でいうところの「理科」に一番近いと思いますが、「理科」だけからテーマを拾ってくるのではなく、ニュースでやっているようなことも取り上げます。2011年の東日本大震災の後には、放射線や原発事故のことを特集しています。大人が興味を持つことは、子どもも興味を持つと思っているので。

だから、読者は子どもであるということを意識せずに、自分たちが面白そう、興味があるということからテーマ設定をして取材に行くのが基本ですね。

――創刊号を持ってきていただいているのですが、『子供の科学』の「ここは伝統だ」と思う部分はなんですか?

土舘:並べていただくと分かりますが、ロゴはほとんど変わっていません。また、今でも受け継がれているのが、創刊号にある初代の編集長だった原田三夫さんの「雑誌の役目」という巻頭言です。この精神は今でも変わっていません。

簡単に説明をしますと、科学がどんどん発達していく中で、興味を持つ子どもは多い。だけれども、その研究の最前線にいる研究者たちには、研究の成果を子どもたちに伝える場がないし、言葉も難しくなってしまう。そこで、私たちが橋渡しをして、分かりやすく、楽しく最先端の科学を研究者への取材を通してみんなに伝えるよ、というものです。

これがずっと継承されているのが、『子供の科学』の伝統ですね。

――94年も続いていると、親子で読んでいる人もいそうですね。

土舘:それどころか、おじいちゃんやおばあちゃん、さらにひいおじいちゃんも読者だったという子どもがいてもおかしくありません。大正13年の創刊ですから。実際、『子供の科学』で研究に目覚めて、教授や研究者になったという方も多いんです。

――先ほど幅広いテーマを特集されるとお話ししていましたが、創刊号から猿の写真だけが掲載されたページがあるなど、バラエティに富んでいますよね。

土舘:「お猿づくし」ですね。スタートから「なんでもあり」なんですよね。

――最新の動きとしては、4月に『子供の科学★ミライサイエンス』という単行本の新シリーズが創刊されました。テーマは「コンピューター」「プログラミング」「統計」「人工知能」を予定されていますが、創刊の経緯を教えて下さい。

土舘:『子供の科学』から生まれた単行本のシリーズは初めてではなく、「子供の科学★サイエンスブックス」というシリーズをずっと発行してきました。こちらはいわゆるビジュアル図鑑的な本で、どうしても自然科学のテーマに偏ったものになってしまうんですね。

ただ、最近は時代の要請なのかコンピューターやプログラミングなどのテクノロジー関連のテーマが非常に人気で、「子供の科学★サイエンスブックス」シリーズに収めるのが難しかったんです。そこで新しいパッケージのシリーズを立ち上げることになったというのが経緯です。

――読者からのニーズに応える形で新シリーズを立ち上げたんですね。

土舘:そうですね。小学校で2020年にプログラミング教育が必修になることもあり、親御さんや教育現場からのニーズも高まっています。そのため、書店でプログラミングについての本を探す方々が増えていて、そういった方々にこの本を手にとってもらいたいと思っています。

――ということは、想定する読者層は『子供の科学』とは少し違うということですか?

土舘:そうですね。『子供の科学』よりもライトな層です。『子供の科学』は宇宙や生物、工作など突出して趣味をもっているような子どもが読んでいて、ある意味"マニア向け"なんですね。でも、このシリーズは、科学をこれから学びたいと思っている人たちにも読んでほしいと思っています。だからかわいいキャラクターイラストに登場してもらったり、やわらかい表現を心がけて入りやすくしているんですよ。

(後編では子ども向け雑誌ならではの「分かりやすく伝える知恵」を伝授!)

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