世の中には、良い商品やサービスを持っていても知られていない企業が多くある。
人員も資金も限られた中小企業では、大企業のように大々的な広告を打つこともできずに「ウチの商品の良さを直接知ってもらえさえすれば......」と歯がゆい思いをしていることも少なくないだろう。
そんな中小企業でも、大企業に負けない集客ができる場所がある。それが「展示会」だ。
そんな「展示会」での営業ノウハウをまとめた一冊が『飛び込みなしで「新規顧客」がドンドン押し寄せる「展示会営業」術』(清永健一著、ごま書房新社刊)である。
著者の清永氏は、展示会営業のコンサルティングとして、これまでに1195社の売上サポート実績を誇る、展示会のエキスパート。
インタビュー後半となる今回は、「展示会営業」を成功させるポイントを伺った。
(取材・文/大村佑介)
■「展示会営業」で成功するためにはどうすればいいのか?
――展示会の規模はさまざまですが、どのくらいの規模の展示会に出るのが最も効果的でしょうか?
清永:規模よりも、自社の出展コンセプト。どういう人に対して、何を伝えたいかが重要ですね。
ビッグサイトで、水、木、金曜日と3日間やれば、少なくとも2万人程度の人が来ます。だけど、自社にとって有効な人が来ていないなら意味がありません。ならば、来場者数が1000人でも、自分たちが伝えたいことを求めている人が来る展示会に出展するほうがいいですよね。
まだ、展示会に出展したことがない企業なら、まずは出展費用が安いところで経験を積むのも良いでしょう。たとえば、市や区、商工会議所さんが主催する展示会があります。安いところなら出展費用が数万円という感じです。
そこで、部門横断で展示会に取り組むというのはどんなものか。お客さんとやりとりはどういう感触なのか。そういったことを知るために出展してみるのはとてもいいと思います。
「こういう人に伝わるのか」というコンセプト面の確認もできますから。
そこから、コンセプトに沿う人が来るテーマ別の大規模展示会に出展していくのがいいでしょう。
――清永さんお勧めの展示会はありますか?
清永:テーマ別の展示会になると、ある程度大規模になります。関東だと、東京ビッグサイト、東京国際フォーラム、パシフィコ横浜、大阪だとインテックス大阪などが主な会場ですね。
いきなり大規模なところだと不安がある、ということであれば、東京の池袋サンシャインでやっている展示会がおすすめです。出展費用もそれほど高くはなく、テーマ別の展示会になっているので。サンシャインに出展した後に、ビッグサイトに行くという企業が結構あります。
――実際に展示会に出展するときのポイントは何かありますか?
清永:「ズラすこと」です。
書籍『飛び込みなしで「新規顧客」がドンドン押し寄せる「展示会営業」術』の中で、教育研修の会社が美容の展示会に出て成果を上げた話を書きましたが、他にもズラすことで成果を上げた例はあります。
ビッグサイトで300社くらいの出展があるコーヒー関係の展示会があります。
そこではコーヒー豆、コーヒーカップ、コーヒーメーカー、コーヒーに入れるお砂糖などなど、コーヒーにまつわる商品が集まるのですが、実は一番お客さんを集めたのが、「紅茶」のブースだったんです。
コーヒーと紅茶を買い付けるバイヤーって、兼ねていることが多いんですね。バイヤーからしたら「せっかくだから紅茶も見ていこうか」という感じで人が集まったんです。コーヒーばかりが並んだ閉鎖空間だから、そのブースは「紅茶」というだけでオンリーワンですよね。
そんなふうに、自分が提供したい情報、情報を伝えたい人が明確なら、ズラした方がお客さんを集めることはできるケースが多いんです。
他にも、面白いと感じたのは、エンディング産業。いわゆる終活やお葬式の関係の展示会で見かけた、とあるブースです。
展示会そのものの雰囲気は厳かですが、一番にお客さまが集まっていたブースでは「漫才」が行われていたんです。それがなかなか面白くて、漫才にその会社が伝えたいコンセプトが盛り込んであって、「お葬儀はこういうふうにやろう」みたいなことを言っているんです。
これも会場の雰囲気からズラしたところで勝負をしたわけです。しかも、単に奇をてらっただけではなく、メッセージも入っているあたりが、ポイントを押さえているなと感じました。
――本書の中では、「展示会営業」と「ゲーム化」「動画の活用」といったノウハウを組み合わせています。こうした色々なアイデアを組み合わせようという発想はどうやって生まれるのでしょうか?
清永:同じことを同じようにやるのが好きではないんですよ(笑)。ちょっとずつ工夫をしていきたいという気持ちがあるんです。それと、人のやらないことをやったほうが上手くいくと思っています。
私は、「展示会営業」のコンサルタントをしていますが、コンサルタントの仕事では、クライアントさんに「人のやらないことをやりましょう」と言うんです。
それなら、コンサルタント自身も自分が言っている事を実践したほうがより良い結果が出せるかな、と。そういう気持ちでいるからアイデアも考えつくのかもしれませんね。
動画の活用の事例は増えつつありますが、それでもビジネスではまだ少ないです。
「ゲーム化」については、以前に出させていただいた『「仕事のゲーム化」でやる気モードに変える』『営業のゲーム化で業績を上げる』(ともに実務教育出版)という書籍に詳しく書いたのですが、嫌々やるより楽しくやったほうが成果は上がる、という話です。
展示会営業よりも先に「ゲーム化」というノウハウがあったのですが、展示会営業をブラッシュアップする過程で、組み合わせていきました。展示会はイベントですから、ゲーム化と相性がとてもいいんです。
――実際に展示会に出展しようと考えている企業もあると思いますが、展示会出展のメリットを他に教えていただけますか?
清永:みんな日々一生懸命に仕事をしているじゃないですか。でも、その仕事ってどちらかというと、ルーチンワークになりがちなんですね。でも、展示会に出展しようとするとそこにルーチンではないことが入ってくる。それがいいんです。
ルーチンではないから、新しいアイデアが生まれてくる。
もちろん、産みの苦しみもあれば、さきほどお伝えしたような部門間の不和も出てきます。しかし、準備が進むにつれて摩擦を通じてだんだん一丸になってきて、社内に一体感が出る。
展示会出展のコンセプト固めや準備を通じて、みんなの目が輝く瞬間があります。そうなれば展示会への出展は必ず上手くいきます。
たぶん、私の展示会のコンサルティングを受けていただいた企業さんも、そういう瞬間をとても有意義に思ってくれているのではないかと思います。
もう一つは、商品やサービスを通じて、何をやりたいか、どういう未来を目指していく会社なのか。また、その会社で自分自身はどう仕事をしていくのか、といったことを深く考える機会になる点です。
私はそれを「志宣言」と言っています。普段、そういったことを話すのって気恥ずかしいじゃないですか。でも、実はどんな企業さんでもみんな、そういう志を持っているんです。
展示会は、その普段はなかなか言えない想いとか志を、来場者に向けて堂々と発信できるまたとない機会ですよね。
――最後に、展示会に臨むのに大事なことを3つ挙げるとしたらなんですか?
清永:1つ目は、漫然と出展していても成果は出ないので、出展コンセプトをしっかり固めましょう、ということです。
これがとても重要で、展示会は出ることが目的ではなくて手段にすぎません。そのあとのフォローも含めて、あらかじめ設計をしておくということがとても重要なんです。
2つ目は、出展コンセプトが固まれば、あとは、一つ一つ細かいことを積み重ねていけば、やった分だけ成果に近づく、ということです。
実際に展示会に出展すると、ブース装飾の仕方、ブースでの立ち方、お客さんとの接し方、照明の加減、お礼メールの書き方、フォロー電話のタイミング、などなど言いだすとキリがないくらい、細かいことがあるわけです。
そういう細かいことを、一個一個やる。
細かいことを積み重ねれば、必ず成果が出ると信じる。これも大切です。
3つ目は、社内の摩擦を恐れずにどんどん衝突する。
せっかくやるのだから、展示会というイベントを通して健全にぶつかって、社内の一体感を高める。
そうやって、展示会を成功させて、社内をさらに風通しの良い環境にしていく。びくびくしないでぶつかり合うことは大切ですね。
わたしは、「展示会は、中小企業が自社の想いや志を世の中に堂々と宣言する最高の場だ」と信じています。ぜひ、多くの企業に、この『飛び込みなしで新規顧客がドンドン押し寄せる。展示会営業術』をお読みいただき、展示会で成果を出してほしいと思います!心から応援しています!
(了)
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