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上司のハラスメントを未然に防げる 部下のコミュニケーション術

 まだ経験の浅い新社会人は、上司とのちょっとしたやりとりにも、何かと気を遣ってしまうもの。

でも気を遣うあまり、コミュニケーションをとることを恐れ、その結果人間関係がギクシャクしてしまうのは最悪だ。

そこで今回は、『誰とでも仲良くなれる敬語の使い方』(明日香出版社刊)の著者であり、企業向けのマナー研修講師も務める松岡友子さんに、目上の人とコミュニケーションをとる上で大切にすべき心得をうかがった。

■目上の人にかわいがってもらうための、コミュニケーションのツボ

――松岡さんは普段、ハラスメント防止セミナーの講師もしていらっしゃるそうですね。本書の内容からして少し意外な印象を持ちました。

松岡:実は、マナーとハラスメントは密接につながるものです。

まず、ハラスメントを引き起こす大きな要因に、コミュニケーション不足があると考えています。そして、コミュニケーションが不足しがちになると、どうしても互いにモヤモヤとした感情が溜まっていき、普段なら何とも思わないことに不快感を持ちやすくなってしまう。

ではなぜ、コミュニケーション不足になってしまうのかといえば、インタビュー前編でお話したような正しい距離感をとれなくなっていることが原因であることが多いんです。

つまり、距離感を誤ったコミュニケーションをとってしまったために誤解が生じ、互いに不愉快な気持ちになり、コミュニケーションをとりたくなくなる……という悪循環が生まれやすくなるわけです。

――では、4月から新社会人となった方に向けて、目上の人とうまく距離感をとりつつ、失礼な言葉づかいにならないようアドバイスするとしたら、何と伝えますか。

松岡:普段からていねいな言葉づかいを少し意識することをおすすめします。

外での用事を終えて帰宅したら、独りごとでいいので、今日あったことを言葉にしてみる。たとえば、「体格のいい人と食事をした」ということを何と表現するかを考えてみてほしいのです。

「でかい奴と飯を食った」と「大きい人とご飯を食べた」。どちらを自己表現として選ぶかは人それぞれです。でも、そもそも選ぶためには、選択肢を持っていなければなりません。その意味でも、実際に言葉にしてみて、「語彙力の大切さ」に気づくことが第一歩だと思います。

――そもそもの語彙力を増やためには、どんなトレーニングがおすすめですか。

松岡:ひと世代、あるいは、ふた世代ぐらい上の人と話す機会を沢山持つといいでしょう。私自身、そういう方が対談なさっているのをテレビなどで見て、言葉づかいについて学ぶことがありますから。

できるだけ目上の人と積極的に話をし、「こんな言葉の使い方があるのか」と驚いたら、自分でも使ってみる。このサイクルを繰り返すだけで、語彙力は確実に高まるはずです。

――ただ、年上の人に話しかけることに苦手意識を持っている若い人もいると思います。そのような人は、まずどのようなことを心がけるべきでしょうか。

松岡:そういう人にとっては、すごく勇気の要ることだと思いますが、出身地や趣味など、どんなに些細なことでも構わないので、自己開示をしてみることをおすすめします。

話しかけられる側にしてみれば、こわがらずに思い切って飛び込んできてくれる若い人というのは可愛いものです。なので、あまり遠慮せずに、目上の人にも自分からどんどん話しかけてみる、ということをしてほしいですね。

――小さな失敗もするかもしれないけれど、まずはコミュニケーションをとること自体が重要だ、と。

松岡:おっしゃる通りです。「失敗」ということでいうと、いつも若い方向けの研修でご紹介する話があります。

ある企業の管理職の方の話ですが、この方は、新人がやってくるといつも「オレの目が黒いうちに、沢山失敗しておけよ」とおっしゃるそうなんです。

自分の育てた部下が、後々、違う部署に行ってから、「どういう育て方をしたんだ」といわれてはかなわないと。なので、自分の管理下にいるうちに沢山失敗して、ちゃんと成長してから他の部署へ行ってほしいということらしいんですね。

初めてこの話を聞いたときは「上司としての本音だな」と思えましたし、部下への接し方として素晴らしいと感じました。

――たしかに理想的な上司ですね。

松岡:私自身、客室乗務員時代にチーフパーサーをしていたことがあるのですが、新人が「ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」という挨拶をしてきたら、「これからは絶対、そういう挨拶はしないように」と注意していました。

職場の先輩に迷惑をかけない新人なんていません。ただ、お客様にご迷惑をおかけすることは許されない。つまり、新人の仕事を見守り、お客様にご迷惑をおかけしないよう、新人の失敗をカバーすることが上司の仕事なんです。

なので、先ほどのメッセージとあわせて、「もし、『新人のやることが迷惑だ』なんていう先輩を見かけたら、ろくな先輩じゃないから、私のところまで引っ張ってきなさい」とも言っていました。

――いまのお話に勇気づけられる新社会人の方は多いと思います。最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。

松岡:言葉は大切な自己表現です。TPOに合わせて服を選ぶように、相手に合わせた敬語表現を使い分けることができれば、多くの人とコミュニケーションを取ることができる魅力的な人になれると思います。

言葉を沢山知っていれば、自分のメンタルを救うことにもつながりますし、表現力の豊かな人はまわりから愛されます。

ぜひ本書を参考に、誰とでも仲良くなれるビジネスパーソンになっていただきたいですね。  
(新刊JP編集部)

『誰とでも仲良くなれる敬語の使い方』の著者、松岡友子さん

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