結婚や就職、転職などの人生の節目は、人生の大きな岐路でもあります。
そこで行う選択を後悔のないものにするために、ぜひやってみていただきたいのが「人生の棚卸」です。
「人生の棚卸」とは自分のこれまでの人生で起きたこと、考えたこと、感じたことを洗いざらい吐き出すこと。それによって自分がどんな時にどんな選択をしてきたかということが整理され、やるべきことがクリアになります。
今回は小説『神の味噌汁』(秀和システム刊)で、様々な人の「人生の棚卸」を描いた、外食コンサルタントの鬼頭誠司さんにインタビュー。「棚卸」の秘訣ややるべきタイミングについてお聞きしました。今回はその前編です。
――『神の味噌汁』についてお話をうかがえればと思います。鬼頭さんは普段外食コンサルタントとして活躍されていますが、今回こういった物語形式の本を書いた理由についてお話をうかがいたいです。
鬼頭:我ながら軽薄な理由だと思うのですが、僕は昔から歌手になりたかったんです。でも2、3年前にたまたま見ていた雑誌に、その年に売れたCDのランキングが載っていまして、100万枚を越えていたのがAKBだけで、他の人は良くて50万枚、福山雅治さんのような有名なアーティストでも15万枚ほどでした。それで、「俺の歌ではダメだな」と(笑)。
ただ、その雑誌には本のランキングも載っていて、そちらでは100万部を越えている書籍が何作かあったんです。それなら本を書くほうがいいかもしれないと思ったのがきっかけです。
――考えることが壮大すぎます。やはり外食関連のお仕事をされているだけに、物語の舞台も飲み屋さんになっています。
鬼頭:そこはたまたまというか、本当に思いつきなんです。そこまで深くは考えずに書いたもので。
――『神の味噌汁』では、神龍一が経営するその飲み屋さんに、様々な背景と悩みを抱えた人々がやってきて、それぞれに「人生の棚卸」をしていきます。これは自分の過去の人生を洗いざらい話すことで、気持ちを整理して、進むべき方向を見定めるという行動ですが、普段のお仕事でそういうことをされているんですか?
鬼頭:いや、仕事とは全然関係ないですよ。仕事上「棚卸」という言葉はよく使うので、どこかの会社のコンサルティングで棚卸をやっていた時期に思い浮かんだのかもしれません。
それは冗談として、自分の人生を振り返って整理することは実際とても大事なことだと思いますが、ほとんどの人はあまりやりません。もちろん断片的に自分の人生を語るということはあるかもしれませんが、1から10まで全部となると大変でしょう。そこまで話を聞いてくれる人もいません。
それでも、誰かに話すかどうかは別にして、人生を振り返ることで気づくことはたくさんあって、今自分が抱えている問題を解決する手段になりえるということを伝えたかったというのはありますね。
――たしかに、「今の自分」を客観視することはあっても、「これまでの自分」を客観視することは少ないかもしれません。では、「人生の棚卸」をどんな時に行ったらいいのでしょうか。
鬼頭:人生の節目節目にやってみるのがいいのではないでしょうか。悩んでいる時にやるのもいいと思いますが、将来について考える時だとか、結婚する時、成人式を迎える時などに人生を振り返ってみると、見えてくるものがあるのではないかと思います。
色々なことが重なって混乱している時なども、頭を整理するためにやってみていただきたいですね。
(後編につづく)
『神の味噌汁』の著者、鬼頭誠司さん