まわりの目を気にしすぎると失敗が怖くなる。また、自分の思うままに生きるあまり周囲に迷惑をかけている人を見れば「ああはなりたくないな…」と思ってしまう。
自分のなかでそんな堂々巡りをするうちに身動きをとれなくなってしまった経験はありませんか?
『もう、「あの人」のことで悩むのはやめる』(サンマーク出版/刊)の著者、玉川真里さんは元々、自衛隊に所属し、臨床心理士として年間2000人以上、これまでに3万人以上の悩みを聞いてきたという異色の経歴の持ち主。本書のなかでは、周囲の目や評価から自分を解放し、なおかつ社会で自分にしかできない役割を果たしていくための考え方として「自分思考」というものを提唱しています。
自分思考とは何なのか。そしてまた、この考え方を身につけるにはどうすればいいのかを中心に玉川さんにお話をうかがいました。今回はその前編です。
――玉川さんは以前、自衛隊に所属されていたそうですが、どのような経緯で臨床心理士の資格をとられたのでしょうか。
玉川:自分自身が信頼する上司夫妻の自殺や元夫からのDVでうつ状態になり、精神科病院へ入院することになったんです。今から思うと、私にとっては彼らが悩みの原因となる「あの人」だったのでしょう。
でもそんな入院中のことです。患者さんたちとの語らうなかで、入院している人は皆さんいい人だし、ピュアな人たちばかりだと気づきました。初めは元気がない人もお話をしっかり聴いたら活き活きしてきて、将来の夢を語りだす。そんな体験の中で、心理ケアの道に進みたいと考えるようになりました。
――自衛隊時代、年間2000件以上の相談に乗るなかで、様々なクライアントに出会われたことと思います。本書にはそのときの経験談も書かれていますが、執筆時に気をつけたことはどんなことでしたか。
玉川:経験談の中でも多くの人が自分と重ねやすい「あの人」のケースを選びました。1人でも多くの人が自分の悩みも解決できると気付いて欲しいと思ったからです。事例は、いくつかのケースを組み合わせるなど、特定の人を限定できないように工夫していますが、よくあるご相談の内容を載せてあります。
――本書のキーワードのひとつである「他者思考」とはどのようなものでしょうか。
玉川:他者の基準や目を気にして生きることです。具体的には、「誰かのせいにする」「事実がなかったように逃避する」「医師や薬が悩みを全てなくしてくれると考える」「一時の癒しを求めて、現実と向き合わない」などの行為がそれに当たります。とくに「癒しを求める」という行為は、他者思考の代表的な行為であり、注意が必要です。癒しとは、「悩みに向き合わず気持ちよくなるだけ」「話したことで気分が軽くなるだけ」など、解決方法を他者や外部に任せてしまうことであり、決して問題を解決してくれるものではありません。むしろ、問題が深くなり、悩みも大きくなります。
――本書では、他者思考を手放し、自分思考へと切り替えることで悩みを解消できると書かれています。しかし、何かと評価にさらされがちな現代人、特にキャリアアップを目指す若いビジネスパーソンや営業成果を求められる営業マンなどにとっては、「他人からの評価」を一切気にせずに暮らすのは至難の業だと思います。こういった人たちがうまく他者思考を手放しながら生活していくためのポイントは何だと思われますか。
玉川:評価は何かをやり遂げた後で、ついてくるものです。やる前に評価を気にするのではなく、やり遂げた後に考えるようにするだけでも随分変わります。評価を気にするのは、多大なエネルギーを使うと心得ておきましょう。そのエネルギーを無駄に使うより、周囲の状況を見極めて、自分の使命感に変えて行動することに使ったほうが有意義だと思えれば、自然とそうなりますよ。
――上の質問とも関連しますが、自分思考を貫こうとすると、「わがままな人」になってしまう危険性もあるのではないかと感じました。自分思考を貫くことと、わがままに振る舞うことの違いはどのようなところにあるのでしょうか。
玉川:「自分思考」と「わがまま」は、全く異なります。「自分思考」には、自分が社会の一員として、何をしていくかという「使命感」があり、どんな結果でも受け止める「覚悟」と「責任」があるから、「成長」にもつながります。「わがまま」には、社会の中での「使命感」や「覚悟」「責任」が伴わないため、他者思考に陥りやすく「成長」にもつながりません。
(後編へ続く)
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