「仕事と親を両立する!」と意を決しても、離れて暮らしていると実現するのはなかなか難しいもの。
親との別居率は76%(2005年)と、過去最高を更新し続けている現状で、「親不孝をしてきたから、私はやっぱり親の介護をする」といって介護のための離職をする人は年間10万人いるといわれているが、「仕事と介護の両立」をめぐる環境はなかなか厳しいものがある。
ところで、あなたは「下流老人」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは、生活保護相当の暮らしを強いられている高齢者世帯のことを指す言葉だが、「年収が500万あるから、年金もそこそこもらえるハズ。私には関係ない!」と思っているような人とて安泰ではないことがクローズアップされている。
というのも、親の介護をきっかけに下流老人の生活を強いられる可能性は誰にでもあるからだ。たとえ今それなりの収入があっても、ある日突然、親に身体的・精神的な問題が発生してしまえば、私たちの人生は昨日まで考えていたものと全く別のものとなってしまう。
親、仕事、家庭、どれも決して疎かにできるものではない。親に介護が必要になった時に備えて、我々は何をしておけばいいのか。『離れて暮らす親のもしもに備える本』(窪田剛/著、クロスメディアパブリッシング/刊)はそんな疑問に助け舟を出してくれる。
ここでは介護に関してよく出る質問の中から、押さえておきたい基本を3つ解説する。
■介護保険って何? 両親は対象なの?
「介護保険制度」とは、要介護の高齢者を社会全体で支援する仕組み。自立を支援しながら、利用者の選択により多様な機関や事業者からサービスを受けられる。
たとえば、家族の支援が受けられない状態なら、医療・福祉のサービスを専門のプランナーが計画し、民間企業やNPOのサービスを、わずかな自己負担額で利用できる。
ちなみに、会社員なら40歳になると、健康保険料とともに介護保険料が上乗せされて給料から天引きされるようになる。また、国民健康保険の加入者ならば介護保険料が上乗せされた納付書が届く。両親も被保険者として登録されている。
■親を家に連れて帰れない場合、どんな施設が利用可能?
ひとくちに介護施設といっても種類はさまざまだ。特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型医療施設のほか、在宅型の訪問介護・看護、短期入所サービスなどがある。
いずれにしても、まずは介護認定を受けるところからスタートする。市町村や地域の相談窓口(地域包括支援センター)に相談し、申請の手ほどきを受けよう。
■親を一人にするのは心もとない。そんな時の選択肢は?
まだ親が自分のことを一人でできるなら、介護施設に入るということまではしなくてもいいだろう。しかし、身体的な衰えから外出を避けるようになり、人とのかかわりが減ると、認知症を含むさまざまな疾患を引き起こす確率が上がってしまう。
よって、介護認定を申請するほどではなかった場合でも、地域によっては介護予防のサービスやイベントなどのアクティビティが準備されているため、やはり市町村や地域の相談窓口(地域包括支援センター)に立ち寄ってみることをおすすめする。
ここで、ぜひ知っておいてほしいのは、公的保険などの制度は整ってきているとはいえ、基本的に介護は「申請主義」だという点だ。制度を知り申請しなければ、何の支給も助けも受けることができない。そして、支給を受けずにすべてを自己負担していては、親を支えるどころか自分の生活に支障をきたすというケースも出てくるだろう。
本書では、保険を含む公的な制度とその利用の仕方をざっと知ることができ、困ったときに頼ることのできる公共の窓口なども紹介されている。これらの概略を分かっているかどうかで、いざというときの対応はかなり変わってくる。親のためにも自分のためにもこれらの知識は得ておいた方がいいだろう。
(新刊JP編集部)
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