国内企業での「社長の高齢化」が深刻化し始めている。東京商工リサーチが2014年におこなった調査によれば「社長の5人に1人が70代以上」だとされる。
つまり近い将来、多くの経営者が「引退」を迎えるタイミングがやってくることが考えられ、そのときには「事業の相続」が発生する。
事業の相続に向けた準備が不十分だと、いざ相続するというときに、多額の税金を払う羽目になったり、親族間で争いが起きてしまったりと、企業の存続を脅かしかねない。
これは、引退する経営者だけの問題ではない。
スムーズに事業の相続をおこない、企業を存続させるためには、「引退」する本人だけでなく、経営を引き継ぐ側にも相続に関する知識が求められる。
関係者はつい楽観的に考えてしまいがちだが、感情に押し流されずに自社が置かれている状況を冷静に見極めた上で準備を進める必要があるのだ。
引き継ぎのタイミングで慌てないためにも、経営者本人とともに「引き継ぐ可能性がある人」も準備をしておくべきだろう。
『経営者の相続税―極限まで減らす5つの戦略 相続税改正適応版』(東峰書房/刊)は、税理士である中野幸一氏が、企業の相続対策について解説した1冊。スムーズな事業承継のため頭に入れておくべきことは、次のようにまとめられる。
1.自社に合った相続対策の見つけ方
2.資産の評価の仕方
3.無駄な税金を納めないための方法
4.円満に相続するための方法
5. 強い企業づくりによる相続税ゼロ実現の方法
ちなみに事業承継とは、会社の経営権を引き継ぐこと。みずほ総合研究所が2012年に実施したアンケート調査によると、回答企業(961社)のうち77.7%が親族内で事業承継をおこなっており、この選択肢が主流といえる。では、できるだけ円満に親族内承継をおこなうためにはどのようなことを知っておくべきなのだろうか。
円満に相続するための手法として、今までは「遺言書」がメインだったが、これから注目したいのが「信託」の活用だ。
事業承継を目的とした主な信託は、次があげられる。
・遺言代用信託
・後継ぎ遺贈型受益者連続信託
・他益信託
そして、そのメリットは
・事業承継を確実に、かつ円滑に行うことができる
・後継者の地位を安定させることができる
・議決権の分散を防止できる
・財産管理の安定性が図られる
2007年の信託法改正と税制改正により、相続・贈与、そして大切な家族の生活に必要な支援として活用できるようになった。家族の揉め事を避け、事業承継にも大いに役立つことが期待できる。
ここでは家族信託に絞って説明したが、やり方によっては支払う相続税額が大きく変わってくるという意味で、相続に関する法律や制度は他にも知っておくべきことは多い。中野氏の言葉を借りれば「法律は弱者の味方ではなく、法律を正しく知る者の味方」なのだ。
本書では、「究極の相続税対策」として、「納税猶予制度」の実践についても解説しており、経営者にとっても事業を引き継ぐ人にとっても有益な書となるはずだ。
(新刊JP編集部)
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