学校生活において何かと特別な目で見てしまう場所の一つといえば「トイレ」です。「大」をしにトイレに行くことが恥ずかしくてつい我慢してしまう、「小」をするにしても友人を誘わないとなんか気恥ずかしい、そして自分の班がトイレ掃除になったときは何か残念な気持ちになる…。
学校に通っていた頃、トイレ掃除が好きだったという人はそう多くはないでしょう。とはいえ、みんなが使う場所。多くの人は真面目に掃除をやっていたはずです。
そんなトイレ掃除を、教育的にも重要だと位置づけて生徒たちに取り組ませている名門私立男子校があります。兵庫県神戸市にあるイエズス会が母体の中高一貫校・六甲学院です。
■名門校が「半裸でトイレ掃除」を行わせる理由
ムック本『「トイレ掃除」で金運アップ! 人生大好転!』(マキノ出版/刊)は、トイレ掃除が心身にもたらす好影響について掘り下げた1冊ですが、六甲学院の教頭(同書の記事執筆時)である金田隆氏が寄稿し、トイレ掃除の教育的な意味を説明しています。
六甲学院では、グループごとに分かれて1人の生徒が約1ヶ月に1回程度の頻度でトイレ掃除を担当するそうです。
掃除の手順は、まず床を掃いた後、ぞうきんで床を拭き上げ、たわしを使って便器を磨き上げます。洗剤はいっさい使わないといいます。
そして、なんといっても特徴的なのは、上半身裸に裸足、素手でトイレ掃除を行うこと。要は短パン一丁です。そうしている理由として金田氏は「おそらく、戦前に始めた当初、服が汚れるのを防ぐ目的だったのでは」と語っています。
このトイレ掃除を通じた教育の背景にあるのは、六甲学院が掲げている「Man For Others with Others」(他者のために、他者とともに生きる人間)という教育指針です。これには、「命は自分のためだけでない、弱者とともにあれ」という意味が込められています。
人の嫌がることを率先して行い、あらゆる場面で感謝や尊敬の念を抱く心を養う。なにか得なことがあるから行うのではなく、他者のために代償を求めずに行う。こうした六甲学院の理念を身をもって学ぶことが、トイレ掃除の目的だというのです。
入学して間もない生徒の中には、半裸で行うトイレ掃除のスタイルに嫌悪感を示す生徒もいるそうです。しかし、「トイレ掃除をするうちに、それを普通のことと受け止めて、短時間できれいに掃除ができるように心も技術も研鑽されていく」(金田氏)のだそうです。また、トイレ掃除の際には上級生のリーダーが監督を行い、自主的に下級生を指導し、集団の規律を学ぶよい機会にもなっているといいます。
トイレ掃除を通じた教育という方法には、異論もあるでしょう。しかし、六甲学院という学校が受け継いできたこの伝統が、確かな効果をもたらしている面もあるようです。
金田氏は「将来、社会に出たときに、本校で学んだ精神を他者のために役立てられる人になってほしい」と生徒たちへエールを送っています。
(割井洋太/新刊JP編集部)
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