本日23時から放送される『情熱大陸』(毎日放送)に、中園ミホ氏が出演する。中園氏は『花子とアン』をはじめとして数々の高視聴率ドラマを生みだしてきた脚本家である。
中園氏は脚本をつくるうえで、数ヶ月におよぶ徹底的取材をいとわない。それも形式ばったものではなく、必ず「飲みの席」で取材相手と本音で語らうことを重視しているという。彼女がこのような創作スタイルをとる背景には、脚本家になる前、占い師をしていたことが関係しているようだ。
中園氏は、今年の元旦にTBSラジオで放送された『美輪明宏薔薇色の日曜日』にゲスト出演した際、占い師として政治家や財界人に接したことで、「どんな人でも“ほころび”や“弱み”を抱えているものなんだ」と親近感をおぼえ、「人間、最後は取り繕えない。自分は、その取り繕えないほうの一面を描きたい」と思うようになったと語っている。このような経緯で、中園氏は取材を重視するようになったのだ。
こうまで言われると、占い師の生態を知りたくなる。そこで今回は、月刊誌記者などの経験を持つレポーター、露木まさひろが約9年にわたり、およそ200名の関係者に取材をしてまとめたルポルタージュ、『占い師!』(社会思想社/刊 ※書影は筑摩書房版を使用)からいくつか興味深い記述を引いてみよう。
まずは、神保町にある「易と漢文の専門書店」の店主が語る「稼げる占い師の条件」について(ここで言っている「占いの学者さん」というのは占い師のことを指すと思ってもらっていい)。
「(前略)占いの学者さんは、哲学、宗教、霊術、実業、東洋医学、物理、電気、書道など、出身分野がいろいろなんですが、結局は思想がない人は、インテリでお金持ちのお客さんが付きません。相手を唸らせる“導きの言葉”が発せないと、単なる占い屋さんになってしまうでしょう(後略)」(P134より引用)
導きの言葉。占いをしてもらったことがない筆者としては、気になるフレーズだ。占い師の語り口が実際にどんなものなのかが知りたくなる。というわけで、元・証券会社の営業マンだったという占い師の言葉を引いてみよう。
「(前略)財を築き、名誉も得た人は、やはり運がいい、と。僥倖・奇跡は億に一つ。幸運は万に一つ。強運は千に一つ。弱運は百に一つ。不運は十に一つ。そして悲運はいっぱいあって、みんながいつでも持っているんです。せめて強運を、と誰もが考えるんですが、強運イコール幸運ではないんですね(後略)」(P205-206より引用)
占い師からこのように畳みかけられ、思わず耳を傾けてしまう客の姿が目に浮かぶ。そこでさらに知りたくなるのは、占い師の「餌食」になりやすい職業とは? ということ。
露木氏によれば「危険と不確実に囲まれる職業」といえる、兵士、船員、政治家、事業家、自由業、タレント、アスリートといった職業に嗜好者が多いらしい。中園氏も触れていたことだし、ここでは政治家と占い師とのつながりがいかに強いものなのかを見てみよう。占い師を信じた政治家は、戦後だけを見ても枚挙に暇がない。
・岸信介(「踊る宗教」で有名になった同郷の預言者、北村サヨと昵懇だった)
・佐藤栄作(佐藤自身、トランプ占いが趣味。寛子夫人も気学方位学マニア)
・鳩山一郎(谷口雅春著『生命の実相』を愛読)
さらにいえば、この類のエピソードは海外にも多く存在する。アメリカでは、リンカーンやルーズベルトの時代から政界が占い師を取り込んできたし、1988年にはレーガン大統領の元首席補佐官、ドナルド=リーガンが回顧録『フォー・ザ・レコード』のなかで、「レーガンのナンシー夫人は、大統領の政治日程を占星術で決めていた」と明かし、話題を呼んだ。ちなみにこの占星術師は、1981年にレーガン暗殺未遂事件を言い当てたことでナンシー夫人の信頼を獲得したといわれている。
これだけ科学が発達し、「合理的であること」をよしとする現代で、占いという前近代的にも見えるものを信じている政治家がこんなにも存在するというのは驚きだった。この話、安倍晋三氏にも当てはまるのだろうか。
(新刊JP編集部)
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