今日10月10日より封切られた映画「GAMBA ガンバと仲間たち」。原作の『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』(岩波書店/刊)は1972年に出版され、40年以上にわたり子どもたちの心を奮い立たせてきた児童文学の名作である。また映画に先立ち、9月17日にはハイブリット型書店hontoで同書の電子書籍版が発売されている。
そして、映画公開と電子書籍版発売を記念したイベント“「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」honto発売&映画公開記念トークショー”が10月6日、東京・市ヶ谷のコミュニケーションプラザ ドットDNPで行われた。
まずは『冒険者たち』作者の斎藤惇夫さんが登壇。「ガンバ」はどのように生まれたかについてトークを行った。
『冒険者たち』はシリーズの2作目にあたる作品で、1970年に出版された『グリックの冒険』(岩波書店/刊)が第一作目となる。ガンバはその『グリックの冒険』の中で脇役として登場するのだが、読者の子どもたちに強烈な印象を植え付けたようで、「子どもたちから段ボール2杯分の手紙をもらったんです。そしてそのほとんどが『ガンバについて書いて!』というものでした」というほどの反響だったという。その一方で斎藤さんにとっても、ガンバというキャラクターは特別な存在だったようで、「一作目の途中でガンバを(物語から)消してしまったことに罪意識がありました」と明かした。
その後、八丈島での木漏れ日を浴びて白く輝いたイタチとの遭遇を経て『冒険者たち』の執筆が始まるのだが、執筆時、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」をずっと聴いていたと語り、曲の高揚がガンバたちの冒険と重なっていることを告白した。
続いて脳科学者の茂木健一郎さんが登壇し、2人でトークを展開。意外なつながりとも思えるが、茂木さんはもともと斎藤さんのファンであり、また子どもの読書をめぐる話で意気投合した仲なのだという。
茂木さんは今年5月に『東京藝大物語』(講談社/刊)を刊行したばかり。そこから「語を書く」ということにフォーカスしたトークが繰り広げられる。そこで『冒険者たち』のキャラクターでも、ガンバと15匹の仲間ではなくあの敵キャラクターについて語られる一幕があった。
茂木:僕はノロイですね。もし小学校で感想文書くとしたら、僕はノロイについて書きます。あの数々の罠とか、美しいもので魅了して引っかけるというのは最高ですよね。
斎藤:それは男の子ならばみんな知っていることだと思います。自分よりも年上の女性の美しさみたいなものですよね。
茂木:ノロイは綺麗なお姉さんの象徴なんですね。
白いイタチのノロイ。『冒険者たち』を読んだことがある人ならおそらく感じ取ったことがあるであろう、あの恐怖と美しさと、そして「どうしようもない」という感覚。その根源が「綺麗なお姉さん」に対する男の子の感情にあったことに客席から驚きの声が上がった。
他にも「編集者と作家は両立できるのか」などのトピックで盛り上がり、さらに質疑応答では、客席にいた映画「GAMBA ガンバと仲間たち」の小森啓裕監督から質問が飛び出すなど、1時間30分のイベントは充実感とともに終わった。
「GAMBA ガンバと仲間たち」は今日より2Dと3Dにて劇場公開されている。親子で楽しむことができる冒険譚。原作を読んだ人も、そうではない人も、ガンバたちの戦いを観てみてほしい。
(新刊JP編集部)
映画「GAMBA ガンバと仲間たち」公式ホームページ
http://www.gamba-movie.com/
*また、10月21日にはオーディオブック版『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』の配信も始まる予定だ。朗読はくまいもとこさんが担当する。
http://www.febe.jp/documents/special/gamba/
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