私たちは多かれ少なかれストレスを抱えて生きているものです。しかし、ストレスの量があまりにも多いと身体や精神面に影響が出てしまい、最悪の場合「うつ」になり、働けなくなってしまうこともあります。
その中でも、特に人間関係のストレスは日々の中で生じやすく、「言ったことが伝わらない」「あの人から嫌われている」など、苛立ちを覚える機会は少なくありません。
もちろん深く考えなければいいのでしょう。しかし、物事をネガティブに捉えてしまうという性格は生まれつき、もしくは育った環境によって形成されてきたもの。そう変えられるものではありません。
では、そんな「イヤな自分」「損な性格」を変えるにはどうすればいいのでしょうか。
メンタルヘルスの第一人者である山本晴義さんが執筆した『心の回復 6つの習慣』(集英社/刊)の第2章「交流分析を使って自分自身を知る」では、「エゴグラム分析」という、50の質問を通して自らの性格の特徴を知ることができる性格診断を使い、その結果をもとに自分の不足している部分を変えるというやり方をピックアップしています。
さらにエゴグラムを応用し、「交流分析」という心理療法を使って「円滑な人間関係を築く」ための考え方が紹介されています。
ここではその中から、他者と良い関係を築き、ストレスを溜めないようにするための思考術を取り上げましょう。
■自分と他者の関係の4つのパターン
「交流分析」では、自分と他者の関係を「基本的構え」といい、以下の4つのパターンに分類しています。
(1)私はOK、あなたもOK(自己○、他者○)
理想的な人間関係で、共感や信頼といった感情に包まれており、少しくらい困難な状況にあっても、関係が揺らぐことはありません。
(2)私はOK,あなたはOKでない(自己○、他者×)
支配的で疑い深い人が取る態度です。気に入らない人がいたときは冷たくあたったり排除したりしてしまい、人間関係に明らかな問題が生じていても、本人は気付かない傾向があるそうです。
(3)私はOKでない、あなたはOK(自己×、他者○)
劣等感を持ち、自分を卑下してしまう人に見られる傾向です。このような人間関係では他人と親密な関係を結ぶことは困難で、表面上はうまくいっているようでも、心の中ではストレスが溜まっています。
(4)私はOKでない、あなたもOKでない(自己×、他者×)
厭世的、拒絶的な人間関係で、人生に価値はない、虚しいと考えています。本当は他人に受け入れてもらいたいという強い願望を持っていますが、他人が与えようとする愛情を拒否したりする。対人恐怖などの傾向もあるといいます。
この「OK」というのは、安心感や信頼がある状態のこと、一方の「OKでない」は安心できない、信頼していない状態を指します。
このうち、理想的な人間関係は(1)です。しかし、これほど完璧な関係を築くことはそうできません。だから、(1)に近い関係にするために自分自身ができることをすることがストレスを減らす最大の努力になるのです。
■ポジティブもネガティブも含めて、まるごと自分を認める
特にストレスを溜めやすく、ストレスからくる疾患や症状に弱いのが「ノン・アサーティブ」な人です。「ノン・アサーティブ」とは「非主張的」という意味で、相手の様子をうかがい、合わせようとする傾向があります。そのため、相手を優先し、自らの感情を抑えているので、ストレスは増え、怒りや恨みが溜まっていきます。
これを改善するためには「自分はどんな感情を持ってもいい」という考え方を持ち、嫌なことがあれば嫌だと伝えることだと著者の山本さんは述べます。
まずは「OKではない」状態から抜け出し、アサーティブ(肯定的)になることが重要です。それは決してネガティブな感情を持つなということではありません。ポジティブな感情もネガティブな感情も平等に感じ、自分を認めることで、怒りにも寛大になることができます。それがストレスを増やさない秘訣なのです。
どんな状況になっても、ストレスを完全に消すことは難しいもの。しかし、その対処方法を身につけることで軽減することはできます。普段から無理をしているといつか心身に悪影響が出てくることは間違いありません。そうなる前に、一度自分自身のことを把握してみてはいかがでしょうか。
(新刊JP編集部)
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