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日本の医療機関が対処できないマラリアの脅威

 デング熱やMERS(中東呼吸器症候群)など、海外から入ってくる感染症が問題になっている。
 マラリアの場合も何かのルートで海外から持ち込まれる可能性が一部の報道機関でも指摘されている。病原体を持った蚊が貨物船や航空機に入り込み、運ばれた先で感染を広げてしまうということもあるという。
 今後、具体的にはどのようなリスクが考えられるのだろうか?そして、マラリアとはどんな病気なのだろうか?
 マラリアの再流行を描いたフィクション『マラリア日本上陸』(幻冬舎ルネッサンス/刊)の著者で現役医師の岩橋秀喜さんにお話を伺った。

――まず、この本をお書きになった動機からお聞かせ願えますか。

岩橋:マラリアは世界規模で見れば大きな問題として認識されているにもかかわらず、日本では関心が薄いということがまずあります。年間100万人近くの人々がマラリアで死亡しているのです。あのエボラ出血熱でさえ死者は数年間で1万人程度です。比較にならないほどの犠牲者の数です。
もう1点、万が一国内でマラリアがブレイクした時、日本の医療機関が上手く対処できるのだろうかという疑問があります。マラリアの患者さんを実際に診察したことがある医師というのは私自身を含めて今の日本にはあまりいないはずです。今の日本はマラリアに対して無防備だと言っていいのではないでしょうか?

――本当にマラリアが再び日本で流行する可能性があるのでしょうか?一体どんなことに注意をすれば防げるのでしょうか?

岩橋:デング熱が突然ブレイクしたのです。マラリアも同様に蚊を媒介する同じタイプの感染症です。ブレイクする可能性はあると思います。アメリカでは以前、西ナイル熱という感染症のウイルスがあるルートで蚊と一緒に輸入され、ブレイクしました。現在も定着しています。
すべての原因はグローバリゼーションと考えていいと思います。グローバリゼーションを止めることはできません。

――なぜフィクションの形式をとったのでしょうか。

岩橋:グローバリゼーションと感染症とは切っても切れない関係にあります。しかし、この事をきちんと理解するためには多くの知識も必要です。そこで、難しい理屈を並べるのではなく、展開を追うことによって自然と理解してもらえるように工夫しました。中学生にも感覚で理解できるようにしています。

――本書ではバイオ燃料・リトレッドといった「エコ」に関連するテクノロジーが登場しますが、こういった新しい技術についてどんな思いを持たれていますか?

岩橋:エコロジーの技術の発展によって、人間のエゴがさらに増長してしまっては意味がありません。本当の快適さとは何かということを考え直すことが大切だと思います

――本書をどんな人に読んでほしいとお考えですか?

岩橋:ぜひ、若い世代の人にも読んでいただきたいです。

――最後になりますが、読者の方々にメッセージをお願いできればと思います。

岩橋:グローバリゼーションによって一部の人たちのエゴが遠く離れた人々にとんでもない災害や不幸をもたらす可能性があることを知って頂きたい。私たち日本人もその渦中にあります。加害者にも被害者にもなりうると思います。しかし、実際にマラリアが流行している国や地域ではいつも被害者になっている人々がほとんどだと思うのです。
(新刊JP編集部)

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