終身雇用制度が過去のものになりつつあり、年金制度も揺らいでいる今、自分の将来を「60歳まで勤めあげて、定年後は年金で悠々自適」などと思い描いている人はもはやほとんどいないでしょう。
ただでさえ65歳に引き上げられた年金の受給年齢が今後さらに上がる可能性を考えると、おいそれとリタイアできない一方で、定年は確実にやってきます。高年齢者雇用安定法によって、再雇用の形で会社に残ったとしても、待遇が大幅にダウンすることも珍しくありません。そうなると、どうしても60歳、65歳といった高年齢で就職活動や転職活動をする必要が生じる可能性は高くなります。
これまでに培ってきた経験や技術を求めている企業は多いから大丈夫?
いいえ、中高年の就職・転職はそんなに簡単ではありません。『再就職できない中高年にならないための本』(谷所健一郎/著、シーアンドアール研究所/刊)によると、たとえ経験やノウハウ、技術を持っていたとしても、こういうタイプの人は企業側から必要とされにくかったり、自分の選択の幅を自分で狭めてしまったりするようです。
■高すぎるプライドが転職の邪魔をする
中高年の転職活動で一番の障害となるのが「プライド」です。
これまで社会人として積み重ねたキャリアには多かれ少なかれどんな人も誇りを持っているはずですが、その誇りのせいで新しい仕事をイチからコツコツやることを「かっこ悪い」と思ってしまったり、転職活動で何社か不採用になっただけで心が折れてしまう人も。ひどい場合は人に頭を下げることができなくなってしまっている人もいます。
これでは、どんなに経験と技術があっても企業側は採用したいという気持ちにはならないでしょう。
同世代の人と自分を比べてしまう気持ちはわかりますが、これまで培ってきたプライドを一度捨てる覚悟がないと、中高年からの転職活動はなかなかうまくいきません。
■固定概念に捉われる
様々な経験を重ねてきた年齢だからこそ、知らないうちに固定観念に凝り固まってしまうことがあります。過去の成功体験から「これはこうでないといけない」という自分なりの「解」はみな持っているのでしょうが、あまりに頑なすぎると「第二の人生」を充実したものにするチャンスをみすみす逃してしまうことになりがち。それらを一度取り払って、自分の経験や知識を使ってどんなことができるかを、まっさらな状態から考え直してみることが大切になります。
■年齢を意識しすぎる
「俺はもう60歳だから」「もう若くないから」と、年齢を気にする言葉を頻繁に口にするのもあまりいいこととはいえません。
「もう若くない」というネガティブな気持ちは周囲に伝染しますし、仕事ができない言い訳のようにも聞こえます。
何歳であろうと仕事をする以上はプロフェッショナルです。年齢がどうというよりも求められている仕事を少しでも質の高いものにするよう全力で打ち込む姿勢を見せることが、中高年の転職では大事になります。
今後、「リタイアしたくてもできない」という状況はさらに加速していくはずです。
その時になって途方に暮れることがないよう、今のうちから「何歳になっても社会に必要とされる自分」作りについて考えておくことは決して無駄にはならないはず。
本書にはそのために必要な考え方だけでなく、面接・職務経歴書の書き方など具体的なポイントについてもアドバイスされており、大いに役立ってくれるはずです。
(新刊JP編集部)
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