1月25日に行われるギリシャの総選挙が、世界各国から注目されている。
ギリシャといえば2010年に実質的な経済破綻に追い込まれたことが記憶に新しいが、なぜ今、この国の選挙に関心が集まっているのだろうか?
その理由を知るために、まずはこの国が「経済破綻」するまでの流れを追ってみたい。
■賄賂、汚職が横行する国
ギリシャについて、前提として知っておくべきなのは、この国が1830年の独立以来、国家の歴史の半分以上がデフォルトに近い状態にあるという、経済的に問題の多い国だということだ。
この財政状態の悪さは、端的に政治の腐敗によるところが大きい。多くの資格や許認可が政治家に委ねられているために賄賂や汚職、脱税が横行し、徴税システムがまともに機能していなかった。加えて縁故採用によって公務員があまりに増えすぎたこと、利権絡みの公共投資を濫発したことなどによって、財政赤字はどんどん拡大していった。
■経済統計の不備発覚。ずさんなギリシャ経済
こうしたずさんさは諸外国も知るところだったため、日本やアメリカがやっているように国債発行で急場をしのぐことも難しかった。
格付け機関によるギリシャ国債の格付けの引き下げ、2009年のドバイ・ショック由来の世界的な株価の急落に次いで、2010年にギリシャの経済統計の不備が発覚すると、ギリシャの国債は次々に売られ、暴落に歯止めがかからなくなってしまったのである。
■なぜ、今回の選挙が注目されるのか?
この事態に加えて、後の対応のまずさもあり、実質的に財政破綻状態になってしまったギリシャだったが、その後の2010年4月23日、ついに政府はEUと国債通貨基金(IMF)に支援を要請、向こう3年間で総額1100億ユーロの金融支援を取りつけた。これによってギリシャは何とか国家破綻を回避、外国からの支援と年金カットや公務員削減などの緊縮財政によって財政再建を続けてきた。
しかし、厳しい緊縮は同時に国民の不満を高める結果となった。それを証明するように、今回の選挙では、緊縮に反対する野党に支持が集まるという状況になっている。
このまま野党が勝利し、政権交代ということになると、財政再建の道のりに暗雲が立ち込める。新政権がそれまでの主張通り緊縮をやめてしまえば、支援するEU各国との関係悪化は避けられない。その結果、支援が打ち切られることになったら、再びギリシャは財政危機に直面し、2010年と同じようにその影響がヨーロッパ各国に及ぶ可能性もある。今回の選挙が注目されているのには、こんないきさつがあるのだ。
“ハイパーメディアクリエイター”として知られる高城剛氏の著書『世界はすでに破綻しているのか?』(集英社/刊)には、世界で起こった様々な経済危機の事例が取り上げられ、その原因と未来が考察されている。
過去を学び未来を予測するのが人類の知恵。自分と自分の財産を守るために、本書は重要な示唆を与えてくれる。
(新刊JP編集部)
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