見出し:ファイナンスのプロが考える「お金よりも大事なもの」とは?
あなたはお金を使う際に、「これは何のために使っているのか」と意識することはあるだろうか。
洋服を買ったけれど着れていない、講座を受けようとしてお金を払ったけれど結局行かなかった、宝くじを買ったけど当たらなかった…こうしたことはよく起こるはずだ。
野口真人さんが執筆した『お金はサルを進化させたか』(日経BP社/刊)は、お金の使い方を教えてくれる一冊であり、前述のような消費行動をしたことがある人にとってはうってつけの一冊になる。
お金に対する知恵を身につければ、お金に苦しむことはない。そうなるには、どうすればいいのか? 野口さんはJPモルガン・チェ―ス銀行、ゴ―ルドマンサックス証券を経て起業、現在はプル―タス・コンサルティングの代表取締役を務める。新刊JPは野口さんにインタビューを行い、本書について話を聞いてきた。今回はインタビュー後編をお伝えする。
(新刊JP編集部)
■お金そのものより大事なもの、それは…?
――本書を読んでいてハッとさせられたところは、「お金を貯める力ではなく、お金を稼げる力を身につける必要がある」という点です。
野口:私がこの本を通して伝えたかったのはそこです。
例えばお金持ちの人は持っているキャッシュで計られます。でも、キャッシュってただの紙切れなんですよ。持っているだけだとどんどん価値がなくなっていくんです。新しいものに投資をしない限り、価値は生まれない。キャッシュとキャッシュフローは全く違うものだということを強調したいんです。日本経済が停滞しているのは、人々がお金を使わなくなったからだといわれますが、まさしくその通りで、キャッシュを使わないと日本の経済は上向きません。
――そこでお金を稼ぐ力を身につけないといけない。ただ、サラリーマンだと働いて会社からお金をもらうという感覚が強く、「稼ぐ」「生み出す」という思考に結びつきにくい気もするんですね。
野口:その場合は、自分を一つの株式会社だと考えてみるといいでしょう。給料というのは会社から見れば費用になります。費用をかけた分、お金が返ってこないといけない。返ってこなければただの「消費」ですからね。費用は「投資」であるべきです。その上で自分のことを考えてみると、費用をもらっているのだから、会社に何か返さないと存在価値がなくなってしまう。会社からどれだけお金をもらうかということを考えるのではなく、もらった分をいかに何倍かにして返すかということを考えないと、自分の価値は上がりません。これはこの本に書いていないけれど、そういう意識を持って働くことが大事だと思いますね。
――本書を通して、お金の賢い使い方を身につけた読者の皆さんに、どのような生き方をしてほしいとお考えですか?
野口:お金に束縛されない生き方を目指してほしいです。生きていくのに最低限なお金だけが常に手元にあって、必要ならば稼ぐ。お金は生きるための手段であって目的ではありません。
よく聞くのですが、お金がありすぎると逆に不安になってしまう人も多いんです。お金の使い方を知らないまま、宝くじにあたってしまい、よくわからないことに使ってしまって逆に身を滅ぼすということもあると思います。冒頭でビル・ゲイツの「うまくお金を使うことはそれを稼ぐと同じくらい難しい」という言葉を引用しましたが、投資を含めて「お金をうまく使う」ことは大変に難しいことだと思います。
――お金をうまく使えていない人は、自分に対する投資ができていない。
野口:もっと簡潔に言えば、自分の価値を高められていないということです。自分のお金を生む力がない人ほど、自分の財産に固執してしまうわけで、分からないまま投資の話に乗ってしまったりするんです。今持っている財産が自分の評価だと思ってしまうのですから。
――まさに本書はお金を使い方を身につけるための教科書のような一冊です。
野口:教科書まではいかないけれど(笑)ファイナンスの理論は一般の人たちにも当てはめることができるという、その基礎的な考え方を紹介しています。ただ、それを知らないままでは、お金の束縛から解放されないので。
――本書をどのような方に読んでほしいとお考えですか?
野口:これはぜひ社会人の方々に読んでほしいですね。あまり経済や経営の素養がない人でもわかるように書いたつもりです。お金を使っていない社会人はいないと思いますから。
――では最後に、このインタビューの読者の皆さまにメッセージをお願いします。
野口:お金は使ってナンボです。お金は自分を高める手段ですから、もし「貯めること」が大事だと思っている方がいれば、ぜひ発想を変えてみてください。そして、その発想の転換の方法がこの本に書かれているので、ぜひ読んでみていただけると幸いです。
(了)
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