中年に差し掛かる年齢になると気になるのが体重です。20代の頃はスリムだったのに、気づけば肥満体型に…なんてこともあるはずです。
そんな肥満体型の人が多く発症するイメージの病気といえば「糖尿病」ではないでしょうか。確かに、メディアでも盛んに「糖尿病は肥満が要因だ」だと言われています。しかし、東京慈恵会医科大学教授の横田邦信さんは、「肥満ではないのに糖尿病の方」は「肥満で糖尿病の方」と同程度か、むしろ多いという臨床的感触を得ているといいます。
■どうして肥満でなくても糖尿病になるの?
横田さんは著書『糖尿病なら すぐに「これ」を食べなさい!』(主婦の友社/刊)の中で、糖尿病発症の仕組みを説明した上で、その原因を次のように指摘します。
「マグネシウムの不足」
マグネシウムは必須主要ミネラルの一つで、骨や歯の形成に不可欠な栄養素。ほかにも血圧の維持や酵素の活性化などにも大きな役割を果たすといわれています。横田さんが特に本書で重要視しているのが、エネルギーの生産に欠かせないエネルギー代謝酵素を活性化する機能です。
横田さんは1988年から21年間にわたって調査された臨床疫学研究の結果、マグネシウム摂取量が増加すると2型糖尿病の発症リスクが有意に低下するというデータを引用し、もっともマグネシウムを摂らなかったグループ(148.5mg以下)と、もっとも摂取したグループ(195.6mg)を比較した場合、摂取したグループは摂取しなかったグループよりも糖尿病になるリスクが37%低下したと述べます。
では、どうしてマグネシウムの摂取量が不足しているのでしょうか。横田さんは「食生活の変化」が原因なのではないかと考察します。
実は糖尿病患者は、1960年頃までほとんど見られなかった病気です。それが急増するのは1960年代に入ってから。
そのときに起きていたことが、マグネシウムが豊富な大麦やあわ、ひえなどの雑穀等の摂取量の激減でした。さらに、1972年には法律によって塩田が廃止となり、食塩の製法が工業化。食塩10gに50mg含まれていたマグネシウムが3mgまで減少したことも重なりました。
データを見ると、現在の日本人のマグネシウム摂取量は、1日の摂取基準量の3分の2ほどと、かなり不足していることがわかります。
でも、マグネシウムは近年まで軽視されてきた栄養素。「マグネシウムの多い食材」と聞いても、なかなかイメージが沸かないはずです。
■日常の食事の中でマグネシウムの摂取量を増やすには?
本書の後半はマグネシウムのより多く摂取できる食材を紹介しており、例えば以下のようなものが当てはまります。
●海藻類
乾燥わかめや日高昆布の素干し、惣菜で使われる長昆布など、海藻類はマグネシウムが豊富。のりやひじきも同様です。じょうずに使って、摂取しましょう。
●そば
「そばの実」という雑穀から作られるそばはマグネシウムが豊富。そば粉の割合が高いものが良いとのこと。また、わさびと七味といった香辛料にもマグネシウムが結構含まれているので、苦手でなければ入れてみてほしいと横田さんはいいます。
●バナナ
バナナもマグネシウムが摂取できる食べ物。また、カリウムが豊富なのも特徴で、塩分の排出効果も期待できます。ついつい朝食を抜いてしまう人は、バナナ1本食べるだけでも違いますよ。
『糖尿病ならすぐに「これ」を食べなさい!』では「マグネシウム不足と糖尿病の関係」や「じょうずにマグネシウムを摂取する習慣」なども詳しく説明されています。専門用語も登場しますが誰もが分かるように解説されており、「これならば自分はできそうだ」と思えるはず。
平成19年の国民健康・栄養調査によれば、国内の糖尿病患者数は予備軍を含めると2000万人を超えると言われています。まずは自分の食生活を見直すことが、大事なのではないでしょうか。
(新刊JP編集部)
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