現代に生きるビジネスパーソンにとって、自分の「キャリア」について考えることは、自分の人生を考えることと同じ意味を持ちます。どんな人生を歩んでいきたいのか、そのためにどのくらいお金が必要か、どのようにキャリア設計をすべきか。悩みが尽きることはありません。
マッキンゼーやBCGをはじめとするコンサルティングファームや投資ファンド、事業会社の経営幹部、起業家など1000人超のキャリアチェンジを支援してきた渡辺秀和さんの『戦略コンサルタント、外資系エグゼクティブ、起業家が実践した ビジネスエリートへのキャリア戦略』(ダイヤモンド社/刊)は、キャリアに悩む人に向けてキャリア設計法を教えてくれる一冊。
本書を通して「キャリア」について考える新刊JPの連載、第3回のテーマは「起業」です。
■若い世代でも起業で成功できるチャンスあり!
「起業」は第1回で取り上げた、「年収の3つの壁」のうちの「階層の壁」を越える上で資本家や経営者側に立てる選択肢として欠かすことのできないものです。起業は、高い年収を得られる可能性があるということや、自由に意思決定できるということだけが醍醐味ではなく、「事業を成長させ、自身のビジョンを実現することで、社会へインパクトを与えていける」点が最大の魅力だと渡辺さんは主張します。
特に最近はインターネット環境が整備され、インターネットを使ったビジネスでの起業が主流になってきました。インターネットビジネスは、先行投資に必要な資金が少なくて済み、いきなりグローバルな展開も可能、トライ&エラーで事業の方向性を修正しやすいという柔軟性があるのが特徴で、起業のリスクをミニマムに抑えながら、社会に大きなインパクトを与えることができます。
■経営知識を勉強するだけではなく、業界の現場を知ることも大切
起業をするには経営知識やスキルが必要です。一昔前まではどんなに優秀でも20代から会社の経営戦略を立案することに関わる機会はそうありませんでしたが、現代は違います。コンサルティングファームやベンチャーキャピタルなどでは、若い頃から経営に関する知識やスキルを磨くことが可能ですし、成長企業で経営幹部として働くチャンスもあるため、経営に関する知識を吸収できる環境が増えています。
戦略コンサルティング経験を積んで起業する場合、例えば以下のような3つのステップでキャリア設計を考えます。(1)コンサルティングファームなどに入社し、全社戦略立案やマーケティング、新規事業戦略などの経験を積み、(2)その上で起業しようと考えている領域に近い業界に入り、業界知識やスキルを身につけ、(3)その業界の問題を解くビジネスを起業するという流れです。
ここでポイントになるのは戦略コンサルの後に、いきなり起業しないことです。(2)の起業したい領域の業界内で知識やスキル、ネットワークを身につけておくことはとても重要です。例えば、その業界でよく発生するトラブルやその回避方法を知っていれば、起業後に失敗するリスクを抑えることができます。起業家として活躍しようと思った場合、大企業を相手にしている戦略コンサルの経験のみでは、同じ“経営”でもベンチャーの経営とはスキルセットが異なるためカバーできない部分も多いのは事実です。
本書ではこの戦略コンサルのほかに、ベンチャーキャピタルやプロフェッショナルサービスを通って起業するやり方を紹介していますが、いずれも現場で経営スキルや知識を身につけることが要求されます。
渡辺さんいわく、「起業というキャリアは自分自身で経営の意思決定ができるという楽しさがあり、やりがいは大きい」。そういう意味では、世の中に何か仕掛けたい、もっとよい社会にしていきたいと情熱を持つ方にとっては、計画的にキャリアを積み、リスクを抑えながら起業することが可能な時代といえます。一方で最近流行しているような「やりたい仕事に就けないから、自分で起業をする」という発想で、準備無しに気合いだけで挑戦するのは危険。勢いだけで経営のスキルや知識なしに立ち上げて成功する人はごく少数といえるでしょう。
次回は「アーリーリタイアメント」について触れます。これは40代の脂の乗った年代でリタイアするというキャリア設計のこと。最近関心が集まっていますが、その実態はどうなのでしょうか…?
(新刊JP編集部)
いまどきの起業家が“無理なく”成功する理由