安倍政権が成長戦略の目玉として「規制改革」を掲げているように、日本社会には厳しすぎたり、時代遅れになってしまっている「規制」が各所にはびこり、それが日本の成長を妨げる要因となっているとする声は多い。
そんな、非合理的な規制について、法律を作る側の立場から解説しているのが、通産省の役人として、長く規制を課す立場にいた原英史氏の著書『日本人を縛りつける役人の掟:「岩盤規制」を打ち破れ!』(小学館/刊)だ。
これらの規制がなぜ生まれ、現代に残ってしまっているのか、原氏は先日行われた京都大学の瀧本哲史准教授との対談の中で語った。
■路上の弁当売りに見る日本の「ダメ規制」
瀧本氏がまず話題にあげたのは、都心のオフィス街などでの弁当の路上販売だ。
「もっと増えても良さそうなものだけど、食中毒など不安な点もある。あれはどういう規制がかけられているのか」と水を向けると、原氏は「あれは条例によって規制されている」と答えたうえで、通常の店舗型飲食店は全国一律で「食品衛生法」の管轄下にあるが、弁当の販売はこの法律の対象外であると説明した。
言うまでもなく、条例は都道府県によってさまざまである。
原氏によると、たとえば東京都の場合は、弁当を持ち歩いて販売するというビジネススタイルは、「行商についての規制」という枠組みで扱われるという。
行商への規制の歴史は古く、戦後間もない頃、劇場に並ぶ人に向けて売られていたおにぎりで食中毒が出たことに端を発する。
瀧本氏の「当時とは事情が変わっているはずだが、いまだにその規制がオフィス街の弁当売りに適用されているのか」という疑問には、「衛生面の管理という目的を考えたら普通は別の規制が必要」とした原氏は、「ただ、“出発点”が行商だったこともあって、今もその枠組みから離れられない」と、規制をする側の問題点を指摘した。
■止まって売ると「規制」の対象に
オフィス街の弁当売りを行商の枠組みで捉えてしまうと、困ったことが少なからず出てくる。
端的なのが、「止まって売ってはいけない」ことだ。行商であるからには移動しつづける必要がある、ということで、一ヶ所に留まって売ると取り締まりの対象になってしまうのだ。
「今は夏ですから、外で弁当を売るのであれば、衛生面から見ても涼しい日陰に留まって売ってほしい。でも、行商の枠組みで捉えられているので動き回らないといけない」と原氏は言い、規制の目的と方策がずれてしまっている典型例だとした。
現状があまりにも鑑みられていない日本の規制。では、こうした合理的でない規制がなぜ現代に残り続けるのか?
8月12日(火)配信予定の後編では、その理由をお伝えする。
原氏と瀧本氏の対談の模様は、8月6日(水)配信の新刊ラジオでも聴くことができるので、日本の規制の裏側について、興味のある方はチェックしてみてほしい。
(新刊JP編集部)
■新刊ラジオ 第1728回『日本人を縛りつける役人の掟: 「岩盤規制」を打ち破れ!』(http://www.sinkan.jp/radio/radio_1728.html)
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