自身が原作を手がけた映画『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』(2014年11月公開予定)が注目を集め、小説家として脂が乗りきっている感のある中村航さん。
悩み、成長していく等身大の若者たちを爽やかに書くことに定評のある中村さんですが、今月発売の新刊『小森谷くんが決めたこと』(小学館/刊)もそんな同氏の才能がいかんなく発揮されています。
とはいっても、ただの青春小説ではありません。ここで描かれているのは「青春」よりももっと深くて、もっと切ない「人生」です。
主人公は小森谷真という30代の男性。
覚えておいてほしいのは、彼が実在する人物だということです。
この作品は、ひとことで言えばこの「小森谷くん」の半生記なのですが、ここで語るべきあらすじは特にありません。
どこにでもいるような男性が、さほど珍しくない生まれ方で生まれて、誰もが通うように学校に通い、友達や恋人と出会い、時には失恋をしたりしながら、皆と同じように仕事を見つけて働き始めます。これといってドラマティックな出来事のない、うまくいくこともあれば失敗することもある、本当にありふれた「普通の人生」です。
しかし、「普通の人生」はかならずしも「退屈な人生」ではありませんし、それを描いた小説も「退屈な小説」とは限りません。
どんなに変わりばえのしない人生でも、その人だけの輝くような瞬間は必ずあります。それを見逃さずに丹念に書くことで「普通の人生」から、誰もが目を奪われるような小説が生まれることもある。この作品はまさにそんな小説なのです。
ところで、「小森谷くん」には「普通」ではないところが一つだけあります。
それは「医師から余命2カ月と宣告された」こと。
この小説が完全なフィクションであれば、何のことはないただの「設定」ですが、「小森谷くん」は実在の人物であり、宣告から2カ月以上経った今も元気に生きています。
これは一体どういうことなのか?
ぜひ本書を読んで確かめてみてください。
映画やドラマでは味わえない、小説ならではの感動がきっと押し寄せてくるはずです。
(新刊JP編集部)
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