「ヘッジファンド」と聞くと、あまり良くないイメージを抱く人も多いだろう。
メディアからは世界的な金融危機が起こるたびにその「主犯」であるかのように報道され、またハイリスクという印象もある。
では実際はどうなのだろうか?
ここで注目すべきは日本のヘッジファンドの動きだ。リスクをヘッジする堅実な運用を行い、富裕層ではない一般層でもリーチできるようになっているという。
今回は『ヘッジファンド×海外不動産で組む 鉄壁の資産防衛ポートフォリオ』(幻冬舎/刊)を著したヘッジファンド証券株式会社代表取締役の植頭隆道さんにインタビュー。後編では資産防衛のために欠かせないことについてお話をうかがってきました。
(新刊JP編集部)
■甘い話ばかりの投資の世界…裏にあるリスクを見抜くには?
―本書では資産防衛のために必要な2本の柱としてヘッジファンドとともに海外不動産を取り上げていますが、これはどうしてですか?
植頭:資産防衛のポートフォリオを組むときに、外貨資産を組み入れておくべきだという考え方ですね。ポートフォリオの基本型はヘッジファンドなどリスク資産40%、海外資産30%、現金30%です。起こらないと思いますが、万が一、日本で経済危機が起きて1ドル300円になってしまったら…。海外資産を組み入れるのは、そういったリスクに対する防衛のためです。
このように富裕層にとっては経済危機に対処する方法は色々ありますが、もっと切実なのは、富裕層ではない一般の方々です。
―では、一般の人たちはどうすればいいのですか?
植頭:例えば毎月3万円貯金をしているとすると、そのうちの半分を外貨で貯金するということもできます。
―本書の中に気になった記述がありまして、国内不動産は長期的に見ると良い投資ではないという話です。今、にわかに人気が出ている国内不動産ですが、一体なぜですか?
植頭:私は株式も不動産も経済成長率に紐づくものだと思っています。今は国内不動産が注目されていますが、人口減少期に入って、国内消費が伸び悩むと想定される日本がこのまま経済成長を続けられるかというと、それは難しいのではないでしょうか。今後人口が増えることがなければ、国内不動産投資による長期的な運用は勧められません。国の強さは国内の消費力ですから。
―消費が停滞する国内よりも、海外の方がいい、と。ただ、外貨資産というと、どうしてもこれから価値が上がる通貨に投資したほうがいいと考えてしまいます。
植頭:個人投資家の傾向の一つとして、大化けするものを狙いたいというものがありますね。外貨取引なら新興国の通貨とか、株ならばITベンチャーとか。ただ、私はその考え方には大反対で、リターンは確かに大きいかもしれないけれど、その分、リスクも大きいんです。新興国には経済破綻や政治リスクの他に武力紛争のリスクなどもあります。リスクをヘッジするという考え方でいくと、到底お勧めできません。
ただ、甘い話ばかりされると、その裏にあるリスクを見抜けなくなってしまう。そこから悲劇が始まってしまいます。
―では、そうした甘い話の裏にあるリスクを見抜くにはどうすればいいですか?
植頭:私たちの業界を見ても、リスクヘッジをしながら運用をすると、年間2割くらいのアップがやっとです。プロが運用してもそのくらいなんですね。月2割、3割という話をしてくる人もいますが、疑ってかかるべきでしょう。リスクヘッジをしていない極めてハイリスク・ハイリターンの運用か、はじめから投資詐欺の可能性があります。でも、相談する相手もなく個人で投資している人は、やはり大きな儲け話に耳を傾けてしまいがちなんです。「投資の世界にはそんなうまい話はない」という実情を知ることが第一だと思いますね。
―なるほど。
植頭:だから本書は、リスクをなるべくおさえて、長期で運用したい人たちに読んでほしいです。富裕層はもちろんそうなんですが、一般の投資家の方々も。また、これから投資を考えている人も多いはずです。そういったすべての方々に、大失敗をする前にぜひ読んでもらいですね。
一回勝つと次は額を増やして投資して、さらにまた勝って、あるところで一気に負けたという人は珍しくありません。負けるときはそれまでのものが0になるどころか、マイナスになることもありますから悲惨なんですよ。だから、これまで運用で失敗したことがある人にも読んでもらえると嬉しいです。
―読者の皆さまへメッセージをお願いします。
植頭:メディアなどによってヘッジファンドに対してあまり良いイメージを抱いていない人も多いと思いますが(笑)、必ずしも悪い存在ではありません。まずは本書を通して、その先入観を解いていただきたいです。
今では、ヘッジファンドでも小口でリーチできる商品が出てきています。大切なのはお金であり、そのお金を守りながら増やしていくことが、長期的に見て最も安定したお金の増やし方だと思います。甘い話に惑わされず、自分の資産を増やしていってもらえると嬉しいです。
(了)
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