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子育てに必要なのは“母親の癒し”

 「勉強させるにはどうすればいいの?」「上の子と下の子の仲が悪い」「ひとりっこでわがままに育ってしまわないか心配」……子育ての悩みは尽きないもの。
 そんな悩めるお母さんたちの味方になる一冊が『この「魔法のメガネ」で、子どもの心が見えてくる』(七田厚、澤谷鑛/著、学研パブリッシング/刊)です。

 本書はしちだ・教育研究所の七田厚さんと、カウンセラーの澤谷鑛さんによる共著で、第1部では七田さんによるお悩みQ&A、第2部には澤谷さんによる子育ての悩みをめぐる物語が掲載されており、お母さんたちの子育てについてのモヤモヤを解きほぐしてくれます。
 今回は、共著者の一人である七田さんにインタビューを敢行。後編では七田さんが経験された子育てのエピソードをお話ししていただきました。

■子育てに必要なのは“母親の癒し”

―「叱り方」というところで最近見かけたのが、電車の中で騒ぐ自分の子に、ものすごく大きな声を出して叱る親です。時にはひどい言葉を投げかけていて、叱ることも必要だと思うのですが「そこまで言わなくても…」という気になってしまいました。

七田:注意はもちろん必要ですが、公共の場で大きな声を出すのは慎むべきだと思います。家の中のような2人だけの世界ではないですから。もしどうしても収まらないようならば、次の駅で降りてから叱るとか、そういう配慮も必要です。
逆に叱らない人もいますよね。それも問題なのですが、話を聞いてみると、叱るべきタイミングが分からないという方がいらっしゃるんです。子育てはマニュアルではないから、自分が思ったときに叱るべきなんですけどね。
子どもへの接し方は、自分が親にされてきたことが物差しとなります。親がこうしていたから自分もこうしよう、というのが最も自然な形です。

―子どもへの接し方が、自分の子どもが親になったときの接し方の指針になるわけですね。

七田:そうなんです。だから、親自身も子どもとの接し方を学んでいく、自分で自分を親として育てていくということをしなければいけません。子どもにとっての最大の指導者が自分であると分かったら、自分の至らなさが見えてくるはずです。

―七田さんも3人のお子さんを育てていらっしゃいますが、戸惑ったことはありましたか?

七田:もちろんありました。特に一人目は肩に力が入りすぎるもので、子育ての理想を追求してしまいがちなんです。でも、そう理屈通りに動いてもらえるわけではなく(笑)それまで幼児や小学生の家庭教師をした経験はあったのですが、我が子に教えるということは全く違う難しさがありましたね。どうしても、感情が入ってしまうので…。

―それは親子ならではのコミュニケーションですよね。

七田:我が子だと、そう簡単に冷静にはなれないんですよ(苦笑)

―奥様と子育てについて議論を交わすことはあったのですか?

七田:それは折に触れて話をしていましたね。本にも書いていますが、家内に言われて「なるほど」と思ったことが、両親が一緒に叱らないということです。2人で叱ってしまうと子どもは逃げ場がなくなってしまう。だから、家内は私が叱っているときは叱らないようにして、子どもに助け舟を出したり、逃げ場をつくるように心がけていたそうです。
基本的に七田家では、勉強面では私がイニシアチブを取り、健康面や食事面では家内がイニシアチブを取っていました。どちらでもない分野は、子どもが寝たあとに意見を戦わせていて(笑)一番話したのは携帯電話のことですね。私は容認派なんですが、家内は小中学生に携帯は要らない派なんです。私自身は、我慢させておくと、いざ解禁したときに使い方に歯止めがきかなくなるのではないかと思っていて、それならば親の目が届くうちに使い方を教えて、いざ独り立ちしたときにも自律できるようにしたほうがいいのではないかと考えているんです。
ただ、私の家では上の子と下の子が8歳離れていて、下の子は今、中学3年生なのですが、8年前とかなり状況が変わっているんですよね。上の子が中学生の頃はスマートフォンもLINEもありませんでしたから。

―そういえば愛知県刈谷市では、小中学生の夜9時以降のスマホ使用を禁止するという試みがなされています。

七田:ありますね。他にも、母親が子どもに携帯電話を持たせるときのルールを何か条か制定したり。

―テクノロジーはどんどん進化していきますし、今後もこうした子育てを悩ます存在は増えていくように思いますが、新しい技術やコミュニケーションに対して、親はどのような心持ちでいるべきだと思いますか?

七田:親がスマホに夢中になって子どもとのコミュニケーションをなくしてしまうのは危険ですね。例えば授乳しながらのスマホ、これは良くないです。母親は子どもがおっぱいを飲んでいる姿を見て、愛情を増していくものなのに、スマホに熱中し過ぎて子どもとの心の交流をなくしてしまうと、愛情は伝わりません。子どもに愛情をもって接することが大事なんです。
一方で、母親自身が寂しさや孤独を感じていると、子どもに愛情が伝わりにくくなります。子育ての問題は、どうしても母親が責められがちなんですが、そうではなくて、お母さんをどう癒してあげるか、母親の問題をどう解決してあげるかが、すごく大切だと思うんですね。
こうした部分は、本の中で澤谷さんが書いてくださっていますので、それを読んでいただければ腑に落ちると思います。

―つまり、子育てを本質的に理解するために澤谷さんのお話が大事だということですね。

七田:そうですね。根本的な問題に対する解決の糸口が書かれていると思います。

―本書は母親向けに書かれていますが、父親の方も読むとすごく参考になると思います。

七田:父母問わず、良い家族にしていこうと思う方に読んで欲しいです。
子育てというのは連鎖的につながっていくもので、自分が受けた教育を、自分の子どもにもしてしまうことが多いんです。だから、もし自分が親から愛情をあまり授けてもらえなかったと思ったら、気づいたその部分を自分なりに変えることが大事です。
子どもが嬉しそうな顔をすれば、親も嬉しいはずだし、楽しい思い出もたくさん作らないといけません。親と一緒に何かをしたり、一緒に過ごしたという記憶が残るようにしてほしいんです。

―他にどのような方に読んで欲しいとお考えですか?

七田:今ちょうど子育てをしているお母さん、お父さん。もしくはお孫さんがいる方。幼児から小学生くらいのお子さんを対象としているので、その年齢くらいの子どもがいる方ですね。あと、子育てというのは会社の上司部下の関係にも似ているということを言われたことがあります。なので、そういったところでも役立つかも知れません。
この本のQ&Aの部分は、右側に質問があり、左側にその質問に対する答えが書いてありまして、ページを開いてすぐにその悩みに対する解決法が分かるようになっています。だから、一家に一冊置いておいていただいて、悩んだときに読んでもらえると嬉しいです。

(了)

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