パソコン仕事などが増えたことにより、現代人は目を酷使しがち。その疲労から、頭痛や肩こりなどに悩まされる人も多いと言われています。
でもちょっと待ってください。その肩こりや頭痛は、もしかしたらもう一つの「視力」によるものかもしれません。
岡山県で25年間、メガネづくりをしてきた「メガネワールド」のオーナーである松本康さんは著書『疲れ・頭痛・肩こりが「脳内視力」で治った!』(三笠書房/刊)で、眼科やメガネ店で調べられる普通の「視力」とは別に、「脳内視力」と呼ぶものがあると言い、なんと日本人の3人に1人がその視力に問題を抱えていると指摘しているのです。
その「脳内視力」を診断する方法とは一体どのようなものなのでしょうか。インタビューの後編をお届けします。
(新刊JP編集部)
■「脳内視力」を自分で診断!
―インタビューの前半では「脳内視力」とは一体どういうものについてお話を聞いてきましたが、この「脳内視力」を自分自身で診断する方法というのはあるのですか?
松本:実はそれをやってもらいたくて、この本を出版したんです。この本には「〈脳内視力〉測定キット」という付録がついていて、赤緑メガネをかけて4つの模様を見てもらいます。それで、「脳内視力」が出ているかどうかを確かめるのです。
―このインタビューの前に、新刊JP編集部でもテストをみんなでやってみたのですが、2番目の「二つの円の絵」の検査で引っ掛かっていました。これは脳内視力に問題がなければ、赤緑メガネで見たときに、二つの円が一つに見え、その円の中に「□×○」が一列に並んで見えるというものですね。
松本:2番目で引っかかる人は多いですね。1番目の「パンダの絵」の検査は、パンダの絵が大きいですし、とても大雑把なんです。だから合致しやすい。でも2番目はそうはいきません。対象物が小さく、二重丸なので精密に重ならないといけないんですね。また、円の中の「□×○」がすごく小さいから視点を合わせにくいんですよ。
―私がテストをしてみてダメだったのが3番目の「十字の絵」です。どうしても棒線が横に移動してしまいます。
松本:なるほど。この検査ではズレの方向が分かります。上下にズレているのか、左右にズレているのかを診断するんですね。横にズレてしまうときは、例えば本を読んだ際に、右が1行目を見たとき、左が3行目を見ているといったようなズレが起きています。だから集中力が続きにくいなどの症状が出てくるんです。私の検査では、何行程度飛んでいるかというところまで検査をします。
―私の場合、左眼で見ると横の棒が右へ右へと移動してしまうのですが、これはどういう症状なのでしょうか。
松本:それはあまり見られない症状です。普通、左眼で捉えた横の棒は左へと移動します。90%の人がそうですね。右へ行ってしまうということは、かなり左眼が緊張していて、ストレス過多になっている可能性があります。だから、気をつけたほうがいいでしょうね。ストレスを発散するなりして、疲れてきたら休むようにしてください。
―ありがとうございます。確かに自覚があります。でも、2回目を見たときには合うんですね。
松本:それは脳が学習するからです。ただ、このテストは慣れてくれば全て問題なしになるかというとそうではなく、それまで出きていた別の検査でズレてしまったりするんですね。だから、誤魔化しがきかない検査なんですよ。
―松本さんはメガネ作りに携わってもう25年以上になるそうですね。
松本:そうですね。20歳のときにこの業界に入り、26年になりました。
―メガネ業界に飛び込んだきっかけは?
松本:もともと自分がメガネをずっとかけていて、メガネ作りという仕事が性分にあったということです。メガネが好きなんです。30歳まではディスカウントのメガネショップをやっていたのですが、大手が一気に入ってきまして、食べられなくなってしまったんですね(苦笑)。ただ、メガネ作りはしたかったし、この本で言う「脳内視力」の存在や、特殊レンズの技術があることも知っていたので、やってみようと転身しました。
―特殊レンズを使ったメガネをつけた方々からはどんな反応があるのですか?
松本:みんな驚きますね。生まれて初めてズレが調整されるいうことを経験するわけですからね。ただ、逆にズレを完全になくすると、酔ってしまって「気持ち悪い」という人もいます。そこまで見え方が違うんですよね。
―「脳内視力」が悪化することはあるのでしょうか?
松本:加齢による衰えというのもあるにはありますが、どちらかというと注意してほしいのは環境ですね。特にプレッシャーやストレスは毒です。
―では、この『疲れ・頭痛・肩こりが「脳内視力」で治った!』をどのような方に読んでほしいとお考えですか?
松本:私は小学校のとき、特別支援学級に行っていたんです。それはなぜかというと、本を読んでも集中力が続かないし、理解もできなくて、テストで0点ばかり取っていたから。でも、知能テストは問題がありませんでした。小学校3年生になって、大学病院に行ったときに、「眼に異常はない。大丈夫だ」と言われました。でも、本当は違っていて、「脳内視力」にすごいズレがあったんです。右眼が1行目を読んでいるのに、左眼は20行目を読んでいたんです。メガネ作りをはじめてからそういった視力があることを知り、たくさん勉強を重ねて克服できたのですが、いまだに僕のような子はたくさんいるんです。こうしたことに気づいて欲しい、知られていないだけで、苦しんでいる人がたくさんいるということを分かってほしいんです。また、私のように苦しんでいる人たちにこのことを知ってほしいという願いも込めました。この本にも書きましたが、私の夢は「脳内視力」検査を、学校に入れることなんです。
―では最後に、インタビューの読者の皆さまにメッセージをお願いできますか?
松本:私は「眼からウロコ」というNPO法人も立ち上げていて、発達障がいの子どもたちや引きこもり、ニートの若者の支援活動をしています。ニートや引きこもりの人たちの「脳内視力」を検査すると、ほとんどの人にズレがあることが分かっています。だから、「自分は何をやってもダメ」と思っている人は検査をしてみてもらって、もしかしたら「脳内視力」に原因があるのかもしれないということを知ってほしいですね。
(了)
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