電車や地下鉄は庶民の足。ということで、毎日窮屈な思いをしながら満員電車に乗って通勤・通学している人は多いだろう。
その満員電車でこんなことがあったら、あなたはどんなリアクションを取るだろうか。
問.混雑した車内で、そばに立っていた女性がこちらを睨みつけてきます。そして、その女性があなたに向かって「やめてください!」と声をあげました。あなたならどうしますか?
A.足でも踏んだのかと思い「すみません」と謝る。
B.とりあえず「どうしましたか?」と尋ねる。
ここで取るべき対応はBだ。Aを選んでしまったという人は、場合によっては「痴漢」ということで逮捕され、その後の人生がめちゃくちゃになってしまうかもしれない。
■満員電車で絶対禁句なひとこと
『痴漢に間違われたらこうなります!』(Satoki/著、弁護士・坂根真也/監修、自由国民社/刊)は、私たち誰もが陥る可能性のある「痴漢冤罪」の実態と対策がまとめられた一冊。
それによると、もし先述の女性が痴漢を受けていて、その犯人としてあなたを疑っていたとしたら、Aの「すみません」はその容疑を認める発言として受け取られかねない。満員電車で「すみません」は禁句、というわけだ。
■「身分を明かして堂々と立ち去れ」は嘘?
では、実際に自分が「痴漢冤罪」に巻き込まれてしまったとしたら、どうすればいいのいだろうか。
よくインターネット上で言われるのが「名刺や免許証など、自分の身分や連絡先を明らかにすれば、刑訴法217条によって現行犯逮捕の要件が失われるので、相手に身分証明書を示して、堂々とその場から立ち去ることができる」というもの。
しかし、これはウソだ…というか、少なくとも法的根拠はない。
というのも刑訴法217条は、簡単にいえば「逮捕容疑が2万円以下の罰金刑だったり、勾留(30日未満の自由刑)や科料(1000円以上1万円未満の財産刑)だった場合、現行犯逮捕できるのは、住所や氏名がわからない者に限る」となっている。
痴漢に関する罪状は「強制わいせつ罪」と、各都道府県ごとの「迷惑防止条例」で、罰金刑の上限がオーバーしていたり、刑罰に「懲役」が含まれるので、この法律は適用されないのだ。
■「痴漢冤罪」を避けるためにまずすべきこと
上記のようなケースで、まずすべきなのは「一刻も早く弁護士に依頼する」ということ。これは、留置場に入れられてからでは遅すぎる。現場となった駅の駅員室に連れ込まれそうになった瞬間から、弁護士を呼ぶ権利が生まれるため、万が一巻き込まれてしまったらすぐに弁護士を呼ぶべきだ。
また、そのためにも普段から「緊急を要する方へ」と、緊急連絡先を明記している、刑事事件専門の弁護士事務所や、各地方の当番弁護士派遣専用の電話番号を携帯電話に登録しておくと便利だろう。
その他にも、痴漢事件に巻き込まれる前に準備できるアイテムや、その使用方法も紹介している。
■ブタ箱に入れられてから読んでも、もう遅い?
多くの男性は、「痴漢冤罪」の怖さなど重々承知で、普段から自分なりの予防策を講じている人は多いに違いない。しかし、それでも「痴漢冤罪」はある日突然やってくる。
本書には、この冤罪で考えうる最悪のシナリオをシミュレーションストーリーとして紹介している。何の準備もしないで痴漢冤罪事件に巻き込まれたら、どうなってしまうのかを疑似体験してほしい。
更に現行法とリアルな司法システムの中で、考えうる限り現実的な対応策が実績ある刑事弁護士の監修の下、詳しく解説されているので、自分の身を守るためにもぜひ活用していただきたい。
(新刊JP編集部)
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