数年前には流行語にもなった「終活」。葬儀や墓を自分の望む通りにしてもらったり、財産の相続が円滑に進むようにする、いわゆる、「自分の死に対して準備をする」活動です。
NPO法人日本リビングウィル協会代表の柳田智恵子さんが執筆した『人生のかたづけ整理術』(ダイヤモンド社/刊)は、そんな自分が死ぬ前に片づけておきたい5つのことが解説されている一冊。ご家族が読んでも十分参考になります。
「家の荷物や持ち物」「お金」「葬儀」「お墓」「死に方」の5つが紹介されているのですが、生前からこれらの準備をしなかった場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。
今回は本書執筆の経緯や、NPO法人で活動している中で感じたこと、考えたことを柳田さんにお話うかがいました。
■あなたは「自分の死」をどれだけ考えていますか?
――まず、柳田さんが代表をされているNPO法人日本リビングウィル協会とは、どのようなご活動をされているのですか?
柳田さん(以下敬称略):尊厳死という言葉を聞いたことはあるかと思いますが、私たちは自分で選べるようになるための活動をしています。
具体的に言うと、例えば延命治療を望んでいない方ですね。「延命治療を受けなくてもいい」と旨が書かれたサイン入りの紙をご本人に持っていただくだけでなく当協会でも保管し、もしご本人がなくしてしまったりしたときに、医療機関やご家族の方からの要請に応じてお送りします。
他に、葬式についての講習会や個別相談会、葬祭業者さんの紹介などもしています。葬祭業者さんの中には、とても良い業者さんもいる反面、ぼったくりのように多額のお金をかけさせようとする業者さんもいます。そもそも葬儀の話ってあまり生前にはしませんし、そんなにしたくもないですよね。だから、遺族の方々も含めて対応が後手にまわりやすくて、結果的にお金がかかってしまうことが多いんです。だから、自分が信用できる葬祭業者さんに、自分のやりたい葬式のアレンジをお願いすれば、お金もかからないし、家族への負担も少しは減らせるでしょう。
――確かにそうすれば、自分の「こういう葬式をやりたい」という願望を実現できますね。
柳田:そうなんですよ。葬式だけでなく、お墓もそうですね。自分は散骨にしてほしいと希望していても、家の都合上、希望通りにいかないこともあります。また、戒名は要りませんと希望しても、戒名がなければお墓に入れない場合もありますね。ほかに、最近増えている声としては「ペットと同じお墓に入りたい」というものですね。
やはりお墓についてもそれぞれ希望するものがあるので、現実的にできる範疇で最もよい選択は何かということを講習会で考えていただくようにしています。
――「リビングウィル」という言葉は「生前の意思」という意味ですよね。例えば、「延命治療拒否の宣言」などが挙げられますが、これに対しては賛否どちらの声も上がっていて、議論がなされています。
ただ、そういった中で自分の死をしっかり考えるということが、世間に根付いてきたのではないでしょうか。
柳田:風当たりは以前と全く違いますね。メディアでも取り上げられるようになりましたし、雑誌でも特集を組んでいただくことが多くなりました。若い方にも、親御さんが亡くなられたときに、ふと「自分の死」について考え始めるという人も増えています。ただ、まだ細かく理解している人は少ないですね。
――では、本書を執筆した理由もそういったところにある、と。
柳田:そうです。広まってきたけれど、まだ一般的な層には浸透していないと思ったからです。希望はいくらでも言えるのですが、法律的にできないことも実はあるんですね。そうなると困ってしまうのは遺族の方々、特にお子さんです。それで家族がもめてしまうのはあまりにも悲しいことですから。
――これまでの家族形態もだんだんと解体されていますよね。農村部では3世帯が同居というケースも珍しくはないですが、都市部では親と別居した核家族が多いです。さらに一人暮らしの方も。
柳田:先ほど、特に子どもが困ってしまうと言いましたけれど、最近はいわゆるお一人様、結婚をしたけれども離婚して一人暮らしをしているとか、お子さんがいらっしゃらないという方も増えています。
だから、今はそういった方々向けにスマートフォンやタブレットを使い、何も起きていないか確認できるサービスを考えています。
(後編へ続く)
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