「睡眠不足で死ぬことはない」という言葉を時々耳にします。
たしかに、「睡眠不足」という死因はありません。しかし、『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』(アスコム/刊)の著者で睡眠専門医の白濱龍太郎さんによれば、睡眠時間の短さや質の悪さがもとで病気になり、命を縮めることはいくらでもあるといいます。たとえ直接的な死因にならなくても「睡眠不足で死ぬことはない」は、かなり乱暴な言葉なのです。
では、睡眠不足によって引き起こされる病気にはどのようなものがあるのでしょうか。
■4時間睡眠が1週間続くと…
たとえば身近なところでは「糖尿病」。白濱先生によれば、「健康な若者の睡眠時間を4時間に制限したところ、たった一週間で初期の糖尿病患者のような高血糖状態になった」(シカゴ大学研究チーム)という驚きの研究報告があるのだそうです。
睡眠不足によって、体内の血糖値をコントロールするインスリンの働きが低下することが原因ですが、そうなれば糖尿病になるリスクはグンと高まります。
仕事が忙しくて睡眠不足のまま一週間なんて、身に覚えのある人も多いのではないでしょうか。寝不足は頭がボーッとするだけでなく、気づかないうちに重篤な病気の原因を作り出していることもあるんですね。
■睡眠時間が6時間をきると、がんの発症リスクが高まる!
さらに、睡眠時間は「がんの発症」にも影響するといいます。
体内には、がん細胞を見つけると攻撃して死滅させるNK(ナチュラル・キラー)細胞という免疫細胞があり、この細胞がきちんと働いているうちは、がんにはなりにくい状態です。
NK細胞をはじめとした体の免疫機能が活性化するのは、副交感神経が優位になる睡眠中。つまり質・量ともに十分な睡眠をとっていれば免疫力が上がり、がんにはなりにくいのですが、睡眠不足で交感神経がオンになっている時間が長いと細胞や遺伝子を傷つける(=がんのリスクを高める)活性酸素が発生する危険が高まります。
白濱さんによると、たとえば前立腺がんは睡眠時間6時間以下で発生リスクが高まり、乳がんも、6時間以下で再発リスクが上がるそうですから、毎日当たり前のようにとっている「睡眠」がいかに健康を支えているか、改めて驚かされます。
ここまで、睡眠不足があらゆる病気を呼び起こす例を紹介しましたが、本書にはそれだけでなく、健康にとってよりよい睡眠とはどのようなものなのか、また、白濱式よい睡眠のための方法や法則がたくさん解説されています。
白濱さんによれば、「長く眠れば眠るほど健康にいい」というわけではありません。
体にとって最適な睡眠時間についても明かされていますので、ぜひ参考にしてみてください。
(新刊JP編集部)
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